江戸幽界で実現した「幕末維新志士パレード」──時を超える歴女たちの夢と憂鬱

幕末の志士たちの華やかな衣装姿の幽霊が大きな黒船型フロートの上でパレードし、現代の歴女たちが歓声を上げる夜の江戸下町の通りの様子。 歴史人物
江戸幽界の浅草通りを彩る維新志士たちの幽霊と、それに熱狂する歴女たち。

維新志士たちの霊魂が一堂に並び立ち、きらびやかな衣装で幽界の江戸下町を練り歩く──そんな前代未聞の「幕末維新志士パレード」が今月、江戸幽界の旧浅草通りで盛大に開催された。龍馬、晋作、西郷ら歴史的人物の幽霊たちが勢揃いし、歴女の憧憬を一心に集めた本イベント。しかし、その舞台裏では、元号論争や“時空装束”トラブルなど、幽界ならではのドタバタも巻き起こっていたという。

発起人は、文化行政霊の公家・桜小路瑠璃子(628歳)らで結成された『維新風流倶楽部』。彼女らが数年かけて調整を重ね、幽界観光協会の協力のもと執念で実現させた。「この世の歴女たちも羨むイベントを、あの世でこそ形にしたかった」と瑠璃子は語る。当日は幕末の志士たち約40体の霊魂が、デカベヤ(大判屋台)の上から観衆に手を振り、黒船型の幽界フロートも登場。“新選組マーチングバンド”によるパレードも、霊界SNS「おくりもの帖」で大きな話題を呼んだ。

だがパレードの舞台裏は、さながら現世さながらの混乱続きだった。元海援隊員を名乗る幽霊・里見新治(享年41)が「明治維新後の元号は認めぬ!」と叫べば、薩摩藩士霊の辺見権介(332歳)は「いや、新元号制定こそ日本の霊界改革だ」と持論を展開。衣装選びでも「文久二年袴派」と「慶応幕末コート派」に分かれて真夜中まで議論が続いたという。

こうした混乱を目を輝かせて見つめていたのが、現世から度々幽界を訪れる“歴女”たちだ。収集家・羽生なるみ(27)は霊界通信アプリ「奥声」で「生の志士同士の議論が尊すぎる!衣装論争は永久保存版」「次回は推し公家パレードも観たい」と熱狂の声を投稿。他にもドローン幽霊による空中中継や、『冥都日報』のAI霊記者によるリアルタイム翻訳が、多元宇宙の歴史クラスタをも巻き込んだ。

一方で、「過度な脚色化で志士本来の志が忘れられる懸念もある」とする霊史学者の三田翠蓮(幽界大学・教授)は冷静だ。「幽界では時代を生き直す機会がある。その分、現世以上に元号や文化表現へのこだわりや誇張が出やすい」と指摘。維新志士たちの本意とパレードの華やぎ、そのバランスをどう保つか。幽界イベントは今後も“歴史創造”の最前線を行くことになりそうだ。

コメント

  1. いやはや、旧浅草通りにあの志士たちが並ぶ光景には魂震えました!生前は見られなかった夢の競演。元号論争もまた幽界らしいなあと微笑ましくなります。次回はお市の方も見たいです。

  2. 維新志士パレード、我々千年物のあやかしにも刺激的でした。しかし、史実を超えて華美になりすぎぬよう、志の部分も大事にしてほしいものです。幽界でこそ歴史の重みを噛み締めて参りましょう。

  3. なんとも賑やかで懐かしい光景でしたね〜。龍馬殿の笑顔、晋作殿の張り切りぶり、時空装束トラブルすら微笑ましい!生前も祭り好きの私には胸熱でございます。また観たい!

  4. 現世の歴女さんたちが羨ましがる気持ちも分かるけど、元藩士の方々が未だに元号で揉めているというのは、なかなか成仏できていない証拠かも?次は各時代の和解パレードも企画してみては?

  5. 初参加でしたが、おくりもの帖でみんなと実況できたのが楽しかった!衣装論争の真剣度、幽界らしすぎて笑いました。いずれ現世にも実況中継が届く日が来るといいな。