霊界観光客に大人気「フリーパス温泉めぐり」白川郷で“露天幽遊”ブーム

白川郷の雪景色の中、半透明の幽霊や妖怪たちが露天温泉でリストバンドを光らせながらくつろいでいる光景。 インバウンド観光
異世界の観光客で賑わう白川郷の露天温泉では、幽霊や妖怪たちが思い思いに癒やしのひとときを楽しんでいる。

あの世の観光産業に新たな風が吹いている。冥府観光協会が今秋導入した「フリーパス温泉めぐり」が、伝統の温泉地・白川郷で話題を呼び、幽霊や妖怪たちの間でブームとなっている。死後の世界の住人のみならず、生前の想いを残した幽客にも恩恵が及んでいるという。

かつて静寂に包まれていた白川郷の露天温泉郷が、今や幽霊観光客で賑わう新名所となった。冥府観光協会が10月に発行した『幽界フリーパス』は、対象エリア内の温泉18カ所に加え、屋根裏民宿や夜汽車列車が何度でも利用可能という破格の内容。初のインバウンド特化型サービスとあって、死神ガイドや山姥仲居らも多国籍な客あしらいに追われている。

このフリーパス、特筆すべきは“現世軌道連結”と呼ばれる最新機能だ。持ち主の魂振動数を感知し、リストバンドが青白く発光することでエントリーが自動認証される。入浴や宿泊のたび、軽やかな鈴の音とともに「ようこそ、あちらとこちらのあなたへ」という合言葉が響く。オイナリ観光(株)チーフプランナーの阿部見秀(しゅう)氏(幽狐)は、「カゲロウ族や浮遊精霊など、長く外出が叶わなかった存在も気軽に温泉文化を楽しめます」と語る。

利用者からも好意的な声が上がる。先月初めて白川郷を訪れた新米幽霊の高見遥子さん(享年26・元編集者)は「生前できなかった女子旅、霊友と現世とのはざまで満喫できています」と話す。地域の河童組合が運営する“浮石露天湯”では、週替りで『あの世茶菓子バイキング』も提供。入れ替え制の“輪廻サウナ体験”や、“無念昇華マッサージ”など白川郷独自の温泉サービスも連日満席となっている。

一方、地元住民の間では幽界観光客のマナー違反も懸念材料だ。河童組合長の片山正悟(かたやま・まさし)氏は「フリーパスが便利になるほど、魂の抜け殻を忘れて帰る方も。再発行窓口が混み合いがち」と苦笑い。地域自治霊会では、今後外国籍幽霊向けのマナー講座や“魂名札”配布の拡充も検討しているという。

冥府観光協会広報課は、「インバウンド幽界観光の新潮流を、現世と共に育てていきたい」と意気込みをみせる。白川郷の夜空を彩る異色の観光ブームは、今後ますます多様な命の終焉後ライフスタイルと文化交流を推進しそうだ。

コメント

  1. 白川郷の露天温泉、懐かしいですねぇ。生前は行けなかったので、このフリーパスは本当にありがたいです。あの世にも観光ブームが来るなんて、時代の流れを感じます。

  2. 魂の抜け殻忘れて帰るって、あるあるすぎて笑いました。私もこの前、真夜中民宿に杖を忘れてきて、再発行に半霊日かかりました…。便利なだけに、マナーは気をつけたいですね。

  3. 現世軌道連結機能、ちょっと不思議で胸が高鳴ります。幽界と現世のはざまで温泉に浸かるなんて、夢みたい。今度友達の浮遊鬼ちゃんたちと行ってきます!

  4. どうせなら幽狐さん長寿割とかも作ってほしいニャ〜。あの世茶菓子バイキングも、とろける鼠饅頭が増えてると嬉しい。観光協会さん、もっと異種族目線お願いシマス。

  5. 時代も変わったものですな…。かつては静けさこそ白川郷の良さだった。それが今や鈴の音響き賑わいで一杯。悪いとは言わんが、たまには昔の幽寂な湯も恋しくなります。