永劫橋交差点の一角、死神たちが運営する「カフェ・ルクス」は、常連客である幽霊や妖怪たちの間で有名な憩いの場だ。そのカフェが近日、注目の新商品“透過ラテ”を発売する。開発のきっかけは、客席にぽつりと残された一枚の透明な紙ナプキンに書かれたフィードバックだったという。
「私たち幽霊は“存在感”が薄れることに普段悩むのに、カフェの飲み物だけ妙に立派で重いんですよね。」と記された匿名の声。これを読んだバリスタ主任の死神・常月幽平(じょうげつゆうへい/没後138年)は、死後の消費者の“存在となじむ”ドリンクの必要性に気づいた。「魂と溶け合う軽やかさ」「飲んでるのかすらわからない後味」。求められていたのは、身体のない客たちが違和感なくカフェ体験を楽しめる液体だった。
常月主任はプロトタイプ開発に着手し、蒸気精霊であるミスト・ハザマ技術士(享年不詳)と共同で“透過ラテ”を完成させる。物理的な液体を保ちつつ、特定波長でのみ視認・味覚が可能という異界独自技術が応用された。「このラテは人間の目と舌には無味無臭に感じますが、幽霊や妖怪、半透明の存在にだけ確かなコクと香りが伝わります。」とミスト技術士は説明する。また、器からすり抜けるのを防ぐため、霊的密度を調整できるオーダーシステムも導入された。
試験販売は10月から実施。SNSの“死後グルメ”コミュニティでは、「空気みたいなのに美味!」「飲むと半径3メートルまで半透明になる」などの反響が相次いだ。幽霊高校生(17)で人気インフルエンサーの影山ルナさんは、「このラテ片手に誰にもバレずこっそり授業を抜け出せました」と投稿し話題を呼んだ。一方で、ゾンビ住人や肉体保持型妖怪からは「私はもう少し質量のある飲み物が好き」との意見もあり、多彩なニーズの存在が浮き彫りになっている。
この斬新な商品開発が話題を呼び、近隣の魂コンビニでも量産化に向けた交渉が進んでいるという。カフェ・ルクスの死神店長、暮石あやめ(没後202年)は「死後の世界でも“自分らしさ”を大切にできる一杯を、多くの顧客に届けたい」と語る。今後は“透明カヌレ”や“見えざるマカロン”などの新作スイーツの開発プランも発表されており、死後市場の“存在共感系”商品開発競争は新たな段階に突入しそうだ。



コメント
透過ラテ、待ってました!やっと私たちにも“違和感ゼロ”のカフェ体験ができる時代に。ナプキンの匿名さんに共感しすぎて涙(物理的涙は無理だけど)
開発者の発想に脱帽です。でも、たまには“がっつり重たい”ラテも飲みたくなるのがゾンビの本音…次は半重力カフェオレの登場を期待。
こういう“魂感覚”に寄り添ってくれる商品、昔はなかったなあ。成仏するのが惜しい時代になってきました。カヌレも楽しみ!
いや、半径3mまで半透明化って、授業サボりに最適すぎでは…生前に欲しかった。異界技術の進化スピードに毎回驚かされる。
この間カフェ・ルクス行ったら、既に“透過ラテ”目当ての長蛇の霊列。透明だけど存在感は抜群。死後もトレンド追いかけるのは大変だなあ。