死後の街・夢界市で、妖怪たちの伝統ビール工房「百夜ブルワリー」と評判の幽霊パティスリー「アンブレイカブル・シュガー」が夢の異業種コラボを発表した。双方の世界観を超えたフードテック企画が、いま異界中のグルメ通とクリエイターから熱い視線を集めている。
今回のコラボは、百夜ブルワリーの代表である河鍋ゲンゾウ(妖怪・722歳)が、幽霊パティシエの水無月レイカ(41、没後8年)に「消えても記憶に残る味」をテーマに提案したことから実現した。関係者によると、互いにまったく異なる“無常”の美学を持ちながらも、過去のフードイベントで奇妙な友情が芽生えていたという。ゲンゾウ氏は取材に「うちのビールは飲んだ後に舌がすり抜ける感覚が売りだが、どうせならデザートも一瞬で消え去る新感覚が欲しかった」と語る。
2026年1月から2週間限定で実施されるイベント『消滅する宴』では、直立する死者の泡サワーや半透明のエクトプラズムケーキなど、両ブランドの代表メニューが同時提供される。最大の目玉は“月夜の残響タルト”だ。一見ボリューム満点のタルトだが、ナイフを入れると一瞬で霧となり、口元に香りのみが残る仕掛け。来場者には記憶にしか残らないレシピカードが手渡される。両店のフードテック担当である灰塚フサエ(幽霊科学者・没後124年)は、「『味わいの幽玄』をテーマに分子調理とパーティクルレシピを導入した。これぞ異分野融合の結晶」と胸を張る。
会場となるのは夢界市屈指の“抜け道広場”。特設のポップアップストアでは、幽界パティスリーの社員幽霊が直接接客し、隣接ブースでは妖怪醸造師によるビールセミナーも開催。イベント広報責任者の銀鏡ランタロウ(死神系宣伝担当・没後32年)は「せっかく死後の世界で働くのだから、ありきたりな体験では意味がない。今回初のポップアップストア×消える商品企画は、若年層の幽霊やパラレル系妖怪にも刺さっている」と自信を見せる。
SNSでも反響は大きい。『タルトが消えた…でも香りが忘れられない』(夢界大学・幽霊学生会アカウント)、『転生したらグルメロスになるかも』(匿名ゾンビ会社員)など、体験者の投稿が続出。専門家に話を聞くと、「幽霊や妖怪、それぞれの生活文化を融合したプロジェクトはまだ稀。他分野のクリエイター流入も期待でき、今後の異界経済活性化につながる」(妖怪経済誌編集、塩崎ホウメイ)と評価する声も。
新時代の異業種コラボレーションとして注目の本企画。果たして“消える味”は死者社会の定番となるのか、今後の展開から目が離せない。



コメント
こういう消えものグルメ、懐かしいわ。昔の送別宴を思い出す。味じゃなくて、残り香や記憶で楽しむのも幽界っぽくて素敵。絶対参加したい!
ちょっと待って、またタルトが霧になる系?前回の催しで口に入れる前に全部消えて泣いたんだけど、進化してるならリベンジしたいな。不思議な体験ってやっぱり癖になるよね。
無常の美学か…生前には想像もつかなかったイベントだなあ。味わいが消えても、記憶は心に残り続ける――成仏しても体験したい!
しかし幽霊パティシエと妖怪ブルワリーのコラボとか、よく実現したよね〜。死後もこんなに活き活き働かなきゃいけないなんて、ちょっと羨ましくもあり、複雑な気持ちです(笑)
思念体にも優しいレシピだといいな…。最近はこういう新感覚グルメで他界から転生してくる友人多くて、異業種イベントの影響力あなどれない。