昨年から続いた干魃問題と霧害に対応するため、霊都セイエンの大型集合霊団地「霞の苑」が都市型アーバンファーミングの一大実験場となった。13階建ての屋上に建設された『天空ミニトマトタワー』の稼働式には、幽霊農業協会や妖怪緑化連盟のほか、住民霊や死神コンサルタントなど100名以上が集結し、死後社会の新たなグリーンインフラとして期待が高まっている。
この施設は、冥界独自の水耕栽培技術『ミストドリップ』と、人魂エネルギーを使ったスマートアグリシステムが融合する最新式。開発責任者の霊能園芸士・皎月幽馬(こうげつ・ゆうま)が「ミニトマトには低温でも色づきを促す霊素が多く含まれ、輪廻野菜の中でも再生率が極めて高い」と語るように、タワー内の各層でスポンジベッド上に可愛らしい朱色の実がたわわに実っている。自動調温板や腐葉精コンポスト装置によって必要な養分が循環し、生ごみの心残りも一掃されている点が特徴だ。
古くは草原や丘陵地で自由に暮らしていた幽霊たちだが、都市化の波とともに“緑の喪失感”が広がっていた。今回の取り組みでは、高層階へのシフトと同時に、コミュニティ型菜園が『霊的な居場所』として再評価されている。管理担当の妖怪土壌アドバイザー・渓魄蘭(けいはく・らん)は「階段をふわりと飛んで登る体験も面白いが、異界住民が物理的に手を動かし、作物の成長に喜びを感じている光景が何より嬉しい」と笑顔で語った。
SNS上でも『ミニトマト祭り』『屋上緑化チャレンジ』といったタグで収穫報告が相次ぎ、住民霊たちの間でプチブームが巻き起こっている。転生直前の精霊ギルド職員(270)は、「こんなに瑞々しいトマトを冥界で食べられるとは」と驚きつつ、有機霊素食材専門店での即日完売に「生前より盛況」と述べた。
また、死神タウンプランナー連盟が提唱する『循環型霊界社会』との親和性も注目され、余剰トマトのカピカピに乾いた種子は低位霊域への供給や転生支援に活用される予定だ。今後はカボチャや月桃など多種の屋上菜園が他団地にも拡大される見込みで、「この世」の都市住民にも負けない、にぎやかな異界のグリーンインフラ革命となりそうだ。



コメント
天空ミニトマトタワー…幽界にもついにこんな未来的な菜園ができるとは!生前もガーデニング好きだったけど、霊素で育ったミニトマトはどんな味なのか、本当に興味津々です。
13階までふわりと飛ぶのは懐かしい気分だけど、やっぱり昔の草原を思い出すなぁ。でも都心に緑が戻るのは嬉しい。屋上で集まるコミュニティ、これぞあの世の日常って感じ。
霊素農法って聞いたときは半信半疑だったけど、SNSでみんなが収穫自慢してるのを見ると、幽界も進んだなあって実感します。来世でもミニトマトタワーあるといいのになぁ。
転生支援にミニトマトの種が役立つって、さすが死神さんたち発想がぶっ飛んでる。生前は考えられなかったけど、今や腐葉精コンポストも普通の光景。霊界って面白すぎる。
有機霊素の即日完売はすごいけど、私みたいな低位幽霊にももう少し行き渡るといいなぁ。余剰トマトが供給されるなら、今から楽しみに成仏せずに待ってます!