現世のオフィスシェアを凌駕する勢いで、幽霊や妖怪が集う異界ビジネス街にて「ゴースト・コワーキング」の新潮流が巻き起こっている。幽かな気配のスペースを横断利用し、持ち主不明の特異スキルが交換される新経済圏の台頭に、異界経済研究会も注目を寄せる。
最初に動いたのは、通称“飄々ビル”を所有する座敷童の楼上花(ろうじょう はな)(公認スペース管理士・年齢不詳)だった。「誰かの気配が残る机や椅子、誰かの夢が染み付いた壁——人間の世界では敬遠されがちな空間が、異界では最高のインスピレーション源になります」。幽霊事務員や一反木綿コンサルタント、河童エンジニアらが自前の空間を互いに貸し出し合うことで、生者向けでは体験できない想像力のコラボレーションが生まれているという。
従来、妖怪や幽霊の多くは千変万化する住居を持っていたが、業務のオンライン化・死後デジタル化をきっかけに「数秒単位で仕事場を交換」「得意分野だけその場でスキル提供」といった超短期のワークスペースシェアが一般的に。ヒトダマ会計士の神坂遊人(かんざか ゆうじん)(221歳)は、先月たった3日で42ヶ所の既成空間に“立ち寄り業務”をこなした。「同時多発的に複数の現場で顔を出せるのは我々ならではの利点です」と新しい働き方への手応えを語る。
こうした動きに商機を見出したのが「ワーカー半透明連盟」だ。登録さえすれば自らの気配や残留思念を自由に貸し出せ、逆に他者の『しがらみフリースペース』『霊的モチベーション付き会議室』などを即時利用できる仕組みを開始。特に人気となっているのは、八咫烏ライター・道上黒羽(みちがみ くろは)が提供する『空中執筆席』。物理的椅子を持たないため“どこでも会議”が可能となり、一部の死神プロジェクトマネージャーらが「もう人間界のコワーキングには戻れない」と絶賛している。
利用者間の“魂のマナー違反”や思念のもつれといったトラブルも指摘される一方、利用者自身による相互評価制度や、精霊士によるクレーム仲介サービスも急増中。SNS『彼岸会話録』には、「今日は妖狐さんの“変幻デザイン席”をシェア!次元ゆがみバグで資料が100ページに化けたけど、刺激的だった!」(悪霊起業家・波頭霧江)、「空き机に勝手に現れた天狗のコピーライターさんと即席ワーク。アイデアが天界レベルに跳ねた!」(抜け首広告マン)など、ポジティブな声が溢れている。
異界経済大学シェアリング学科の百段彩雲准教授は、「物理的な場所と精神的な気配が等価に流通するのは、死後世界ならではの現象。現世とは逆転した“空間の価値観”が今後、異界内だけでなく人間社会にも逆輸入される可能性があります」と述べ、今後の広がりに期待を寄せている。幽霊たちによるコワーキングとスキルシェアは、今日も境界を超えて広がり続けている。



コメント
さすが死後デジタル化…幽界も時代の波に乗ってきましたね。生前は引きこもってましたが、ここならふらっと誰かの席に座れる気軽さがありがたいです。飄々ビル、今度覗いてみようかな。
昔は一反木綿さんたちと山の陰で情報交換してたけど、今はこんなスマートにシェアできる時代なんですね。天狗コピーライターの即席アイデア、私も便乗してみたい!
これ、現世のオフィスワーカーたちが聞いたら腰抜かすかも(笑)でも、魂のマナー違反っていうのが心配。わたし一度、残留思念とぶつかってデータ飛ばしたことあります…皆さんお気をつけて!
懐かしいなあ、成仏する前は物理の空間に縛られてたけど、今や場所も気配も自由自在。次元ゆがみバグ、出会ってみたい…異界ならではのクリエイティビティって生者にも伝わったら面白いのに。
どうせまた幽霊サイドだけ得する仕組みじゃないか?妖怪たちは飄々と得意分野回してるけど、うちのチームはまだ半透明連盟の使い方すら分からん。サポート強化もお願いしたいとこです。