昨年より導入された“川越し移民”政策により、逆河童自治区で新生児の数が過去最大規模となっている。伝統的に閉鎖的とされた同地域の人口増加が、死後社会全体の移民・定住政策に新たな影響を及ぼしている。
逆河童自治区は冥界大河の中流域に位置し、幽霊や妖怪のほか、かつて水死した者や水神族など多種多様な住民が交わる地である。2025年初頭、自治官ナギヌマ・リョウスケ(幽河童、206歳)は、深刻な労働力不足と急速な少子高齢化を懸念し、“川の外”から特定技能を持つ亡霊や異種移民の受け入れ枠を大幅拡大する新政策を打ち出した。『このままでは川底の伝統すら消滅しかねない』と危機感を語るナギヌマ官だが、実際には過去一年で1,200体を超える新住民が登録し、出生(孵化・誕生を含む)が前年比約300%増という異例の事態となった。
注目すべきは、“川越し移民”の多くが現地で家庭を築き、伝統的な逆河童家庭との混血や文化融合が広がっている点だ。特に、海外幽霊(通称・ヨソモノ霊)と地元河童の間に生まれる“ハイブリッド新生児”は、片足が透明でもう片方が甲羅というユニークな姿で話題になっている。自治区内の保育所『水端茂園』園長のミズノ・ハルヨ(河女、157歳)は「多文化保育が難しくなったが、そのぶん新しい祭事や子守歌などが自然発生し、川の声が以前より賑やかに感じられます」と語る。
一方、旧来より自治区に定住してきた“純血河童派”からは、不安や戸惑いの声も上がっている。SNSでは“川底同盟”を名乗るアカウントが『幽霊の手は皿の水を濁らせる』『昔ながらの孵化法が失われつつある』との投稿を繰り返し、多文化化に警鐘を鳴らす意見が拡散。こうした動きに対し、冥界社会研究所のイズミ・タツヒコ所長(死神、帰化6年目)は「歴史的に見れば、河童自体も川や死後の社会に適応して変容してきた。むしろ、異種移民による新たな住民像が自治区の持続に道を開く」と指摘している。
自治区庁舎では今月、出生地の証明書を母体の種族別ではなく“水域多様性型”で発行する新制度を試験導入した。また難民対応課では、洪水で流れ着いた異世界難民や迷子の幽霊児童にも短期居住権を与える措置を拡充。“共に流れる社会”を標榜する逆河童自治区の今後が、死後世界の新たな人口潮流を先取りする試金石となりそうだ。



コメント
ヨソモノ霊との混血新生児、なんだか未来の川底を感じて懐かしいようで新しい気持ちになりますね。うちの孫も透明な足だったら面白いだろうな…。
こんなに出生が増えるとは正直ビックリ!うちは代々純血河童でしたが、これからは混じり合う波が当たり前なのかも。異界でも多様性が進むんですね。
川底同盟の言い分もわかるけど、昔から川って流れ変わるのが自然だと思う。皿の水が濁るどころか、いろんな命が泡立って賑やかになる方が楽しいよ。
川越し移民政策だけど、迷子の幽霊児童まで保護するのはちょっとやりすぎじゃない?あの世にも管理の限界がありそうで少し心配…。
異世界から流れ着いた難民さんも受け入れるなんて、成仏間際には考えられなかった…。でも最近、『共に流れる社会』って響きが少し羨ましいです。新しい歌も聴いてみたい。