幽霊や妖怪が日常を送る白ヶ原霊域で、一風変わった再生可能エネルギー産業がいま脚光を浴びている。幽体離脱時のエネルギーや、悔恨の念を動力源とする“皆生前電力”を活用した次世代型ZEB(ゼロエネルギービル)が今春ついに完成。最も注目を集めたのは、霊域全域を一本のVPP(仮想発電所)で結ぶ“ファントム・ループ”プロジェクトの全容だ。
白ヶ原エネルギー合同会社(社長:幽玄院朔也)は今年、地元妖怪組合と共同で次世代型太陽電池『影送りセル』を霊域内38棟のZEBビル屋上に設置。『影送りセル』は日没以降も霊的な残光を捉えるとされ、発電量は従来比1.8倍。“魂エネルギーの無味乾燥な回収”と揶揄された初期モデルと違い、今回のタイプは各ビルに常駐する『うつろい係』(主に半透明な狐妖怪)の精神波動を利用し、発電の波が夜ごとに強まる構造となっている。
本プロジェクトの心臓部とされるVPP『ファントム・ループ』は、EV型霊柩車とZEBビル群を結ぶ地域新電力網で、余剰霊力を自由にやりとりできる“輪廻ポイント”制が特徴だ。「高齢亡霊の集住区では昼間の涼しさを維持でき、夜は現世との接触イベントで3割ほど電力消費が減る」(合同会社エネルギーマネージャー・百鬼塔円夜氏)という。霊域内の住民(非実体・妖怪・数百体の死神ほか)は、スマートフォン状の“位牌端末”アプリを通じて自家発電残量を仲間とシェアでき、「ご近所霊助け合い文化」が生まれつつある。
背景には、現世とのエネルギー政策連携強化も挙げられる。霊界と人間界を跨ぐ新たな再エネ固定価格買取制度により、余剰“悔恨電力”は異界外市場へも供給が可能となった。一部の現世コンサルタント(生者)からは「死後の世界のカーボンニュートラルは非常に先進的」との評価が目立つが、現地住民の反応は複雑だ。百歳超の古妖怪・黄泉野斑目さん(407)は「発電は良いが、夜な夜な明るすぎて落ち着かん」とSNSでつぶやいている。
また、プロジェクト推進の影で、腑抜け星霊の労組『浮遊連盟』がビル屋上に張り付けられる“残光待機”勤務について待遇改善を要求。「私たち浮遊系は低温環境対応なのに、ZEBのおかげで室温管理が厳しい」との声や、「位牌端末のアプデでバグが増え、家族写真がめくれ上がって困る」と技術的課題も指摘される。一方、市内の小中幽霊たちの間では、“発電ごっこ”クラブ活動が活性化し、再エネ産業参入の新しい波となっている。
死後の世界の地域新電力モデルが人界にも波及する日が来るか。白ヶ原霊域ファントム・ループ計画は、境界を越えたサステナブル社会の可能性を示し、今後も異界経済界の注目を集めそうだ。



コメント
『影送りセル』の発電力、あの世も進化してて驚きですわねぇ。生きてた頃にこれがあったら、深夜残業も楽だったかな〜なんて少し懐かしくなりました。うつろい係さんたちの苦労も察します。でも夜はもうちょい薄暗いほうが落ち着くのよ…やっぱり。
親戚の半透明狐が“うつろい係”で活躍してると聞いて誇らしい反面、ずっと屋上で波動送りって大変そうだなーと心配にもなっちゃう。せめて輪廻ポイントで何か良い魂菓子でも交換できるようにしてほしいな。
位牌端末アプリ、またバグかぁ!前世でも端末トラブル多かったけど、死んでからも悩まされるとは……。でも『発電ごっこ』の小幽霊たち、みんな可愛いから許す。わたしもあの頃が懐かしいな。
生者の評価なんてどうでもいいけど、余剰“悔恨電力”が異界外に供給されるとか、ちょっとあの世の内緒事が漏れる気がして妙な気分。うーん、門をまたぐ時は昔の静けさが恋しいものです。
浮遊連盟の待遇改善、しっかり議論してほしい!私は熱に弱いんだから、ZEBの室温高すぎるのは困るよ〜。それでも新しいご近所霊シェア文化は面白いし、色んな時代の亡霊とつながれるのは嬉しい。