昨年秋から、南死界平野の端に位置するムクモリ村で、“透明ミミズ団”による全く新しいオーガニック農法が注目を集めている。この幽体農業グループが始めたのは、地産地消・生物多様性重視の“地底CSA”プロジェクト。入り組む冥界の土中で、見えぬ仲間とともに土壌を豊かにし、不思議な収穫物を村人へ届ける取り組みだ。異界社会の新たな食の波を追った。
透明ミミズ団の創設者であるツチノコ・ルリナ(352)は、「死後生活でも安心して食べられる作物を育てたい」と語る。見た目にはまったく姿が確認できない“幽体ミミズ”たちは、古墳由来の腐植や、千年杉の落葉、山天狗たちから分けてもらったきのこ床を使い、独自配合の微生物培養を展開。実態のない体だからこそ土壌の隅々まで入り込め、土の微細な層を丁寧に改良することができるという。昨春から運用された地底CSA(地域支援型農業)のシステムには、村の妖怪家庭や幽霊高齢者など35世帯が参加。「どこにも売っていない“糸状根レンコン”や“夢見小豆”が届く」と人気だ。
透明ミミズ団の農園では、有機JAS霊界版を厳格に遵守。あの世特有の“魂素残留検査”や、“負の感情ゼロ宣言”など独自基準を設けている。フェアトレードにも積極的で、外界の死神供給組合と連携し、即身成仏堆肥や亡者花の花粉など、入手困難な原材料を正当な対価で仕入れている。これが団員たちのモチベーションにもなり、「異界における農業倫理の実践例」として高く評価され始めている。
「幽霊や妖怪は食事をしない」との先入観を覆し、“食の営み”を死後社会でも大切にする風潮は、SNS「モノノケフォーラム」でも議論沸騰中だ。参加世帯の中には「CSAで届く野菜には懐かしき生前の香りが宿る」と語る元和菓子職人(享年74)の声も。「土壌が蘇れば、村の気も明るくなった」と呟く山女(590)は、今では毎週のお裾分け野菜で“冥界鍋パーティー”を開催するようになったという。
農業コンサルタントのドクロ谷源蔵(不詳年齢)は「土壌改良のイノベーションを幽体存在たちが担う時代だ。生物多様性だけでなく“死者多様性”の観点も大事」と語る。また、プロジェクトは今後、外界の納骨堂や墓園とのコラボによる“盆供えCSA”の実現も視野に入れている。透明ミミズ団の活動があの世にもたらす“新しい地の恵み”、そして共に生きる(死後も)社会づくりの波は、今後ますます広がりそうだ。


コメント
冥界にもオーガニックとCSAの波が来るとは!地底で育った夢見小豆、昔の家の台所を思いだしてちょっと切なくなる…。透明ミミズ団さん、次は霊界野菜市とかやってほしいです。
死後の世界でも土壌改良って大事だったんですね。透けてて見えないミミズたちが働いてると思うと感心します。今度冥界鍋パーティーに糸状根レンコン持っていこうかな。
うちの墓所にも地底CSAチラシ届いてました。うさんくさいかと思ってたけど、有機JAS霊界版や“魂素残留検査”までやるとは…。生前より徹底してそうで笑いました。
フェアトレードも、成仏堆肥も…なんだか私らしい暮らしができてるか昔より考えさせられる記事でした。あの世の農業って、どこか神秘的で誇らしいです。
こんなに盛り上がってるのに、生前SNSで「幽霊は食べない」って言われて寂しかった私、今では毎週CSAの野菜が楽しみ!生きてた時より食卓がにぎやか。透明ミミズ団さんに感謝!