死後世界最大級の交霊市“シンエン・バザール”に、全く新しい形の「ゼロウェイスト広場」が誕生した。幽霊や妖怪、市井の精霊たちが日常を彩る異界の市で、無駄なゴミを出さず全員参加型のごみ削減を目指すこの取り組みは、亡者コミュニティ内外から大きな反響を呼んでいる。広場の開設から三周忌を迎えた今、現地の熱気と工夫に満ちた日常に迫った。
広場の目玉は“給水スポットの泉”。生前は給茶器メーカー勤務だったという幽霊・朝霞コノエ(享年38・自縛霊歴5年)は、毎朝自ケガレで抽出される“無念ティー”をマイボトルに詰め通っている。彼女は「浮遊中も喉が乾くんです。プラカップを減らそうと遺族会と話し合い、今や幽霊の8割がマイボトル持参です」と笑う。新規導入された“霊力充填型マイボトル”は、死後の力で洗浄・熱湯消毒も可能になったことで、物理ゴミ減量に貢献しているという。
市場中央のバルクショップ“浮遊物補給所”もにぎわう。こちらでは袋を持参した亡者や唐傘妖怪、御札精などが、粒状の怨念豆や無農薬冥土米、魔除けアルファパウダーを量り売り。生前より環境意識が高かったラグナ・シラユキ(精霊・140年)は「透明な体を保つには変なごみが混じらないのが一番。ここはアップサイクル品も多くて、古札を織り直した布なんか絶品です」と楽しげに語った。
生ごみ堆肥にも独自の工夫がある。“ナキムシ堆肥場”では、生前の涙や未練がいっぱい入った幽霊の残渣を“冥府菌”が分解。これが地獄花壇や天界葬花の肥料に利用されている。管理人の鬼族・節分ヨモギ(80)は「泣き落とし特価の日は堆肥が特に良くできる。今は堆肥を使った鉢植え霊樹のレンタルも人気です。悲しみも循環の一部」と、死後ならではの循環型社会をアピール。
また、“漂着遺品のリペアコーナー”では、あの世に流れ着いた生前品や壊れた幽具の修繕も盛況だ。鎮魂鍛冶のウヅキ=カガリ(死神・230年)は「刀も箪笥も陶器も、未練を煉り直してアップサイクルする。再利用で歴史が連なり、霊界のストーリーも継承されるのが誇り」と話す。SNS上では「人間界より死後界の方がエコ」「来世こそマイボトルデビュー」といった声も多く、地上のゼロウェイスト運動に一石を投じている。
シンエン・バザールのゼロウェイスト広場は、死者も生者も隔てのないエコ文化の実験場として日々進化中だ。“ごみゼロ”のその先、“未練も循環”させる異界流のエコ意識が、死後社会に新たな風を吹き込んでいる。



コメント
自縛霊として長いけど、マイボトル持参がこれほど浸透するとは思わなかった!無念ティー、今度わたしも詰めてみようかな。成仏前にもっと色んな取り組みに参加したくなった。
しかし“ナキムシ堆肥場”って名、いい味出してるよな。生前の涙が花の肥料になるなんて、哀しきものも役立つのがまさに死後界っぽい。うちの墓所の花壇もお願いしたいな。
転生組だけど、こういうエコな取り組みを生前にもっと知ってたらなあっていつも思う。広場がどんどん進化するの見てると、来世でも思い出しそうで不思議な気分になります。
SNSで『人間界より死後界の方がエコ』って話、最初は笑ったけど…本当にそうかも。御札のアップサイクル布、私も愛用してます。生前より物が大事にされてる気がする。
まあ、死神のウヅキ=カガリさんが鍛えたアップサイクル品は本当に強靭。前世の思い出ごと修復されていくの、ちょっと切なくて、でも温かい。死後も物には魂があるのね。