あの世の起業家コミュニティで急速に注目を集めている「タビヤ・オフライン合同幽魂会社」。その創業者にして代表を務めるのが、木立の精霊・木霊田旅哉(こだまた びや)氏だ。過去には人気のない山奥でひっそりと囁き声をもてあそび、時代遅れと軽んじられていた妖怪のひとりだった彼が、いかにして異界のベンチャー最前線へと躍り出たのか。新たに開催される“異界ワーケーション体験会”の舞台裏や、木霊仲間たちの本音を交え、旅哉氏にじっくり取材した。
「人間世界ではリモートワークやワーケーションが進むって聞いたけど、実はあの世の森の精霊業界はずっと前からテレパシー会議が主流。そういう意味では我々が本家本元なんですよ」と、旅哉氏はひょうひょうと笑う。その言葉通り、木霊たちは現世の山や里に点在しつつ、日夜“森の囁き端末”を介しコミュニティを維持してきた。しかし、近年は木材価格の下落や森開発で住処を追われ、従来の働き方や暮らし方が大きく揺らいでいるという。
「このままだと次世代の木霊は、生まれ育った古木を離れて“都市の隙間”みたいな変な環境に暮らす羽目になる。それならばいっそ、自分たちで新たな働く場と価値観を作りたい」と立ち上がり、仲間数体とともに合同幽魂会社を設立。法人化にあたり、同族のヌリカベや座敷童子による緻密な議論が繰り広げられ、「利益が出たらどの木に宿すか」「幽魂株の分配は囁き回数で良いのか」といった独自の契約ルールが生まれたという。
今年からは異界全域を対象に、“森ごとリース型”ワーケーション事業を本格始動。古代樹林の中で物理的にも精神的にもリフレッシュできる特別ツアーを組み、幽霊や妖狐、夜道を舞台に生きる死後ワーカーたちの新たな交流の場とした。旅哉氏は「現場参加者の声がダイレクトに事業を育てる」と、実験的に“オフライン集会”(物理的移動が可能な幽霊限定)も開催。最新の集会では、妖怪同士が互いの「退屈」を交換するワークショップや、枯れ葉ドリンク手作り教室、遠吠えによるアイデアピッチが大盛況となった。
こうした動きはSNSでも話題を呼んでいる。匿名の霊能スタートアップ代表は「木霊田さんたちのコミュニティに参加し、異界の“伝わり合い力”を再発見できた」とコメント。死後の若手起業家からは「物理の制約を逆手に取った自由な対話がまぶしい」といった声も寄せられる。一方で、「会議中に林ごと消えている木霊が多くて議論が進まない」「遠吠えピッチは眠気が誘発される」といった課題も指摘されている。
旅哉氏は今後について、「100年後も憩いの森が残るような社会を目指す。そのために、死後ワーカーと生前ワーカー双方が参加できるハイブリッドな場を拓きたい」と展望を語る。木陰でのんびり過ごしていた霊たちが、今や死後社会の持続可能な未来を真剣に描きはじめている。彼らの小さなさざめきが、次なるイノベーションの原動力となるのか──あの世のベンチャー界隈から、今後も目が離せない。


コメント
ワーケーションって現世だけの流行かと思ってたけど、あの世の木霊たちはずっと森でやってたんだね。森ごとリース型って発想、昔の仲間で集まってたころを思い出して懐かしくなりました。今度こっそり参加してみようかな。
森の精霊さんたちも働き方改革か~。でも、林ごと消える木霊が多いってのはちょっと笑っちゃいました。幽魂株の分配とか、会議方法も独特で面白そう。自分の棲む沼にもワーケーション誘致できるかな?
木霊田社長の熱意って本当にすごい。生前ワーカーとも繋ごうとするその姿勢に共感します。あの世だって持続可能な社会を考える時代なんだな、としみじみ……。やっぱり、死後の未来もみんなで作っていかねばですね。
正直、幽霊同士の『退屈』交換ワークショップってどんな感じか気になって夜も眠れません(昼寝はするけど)。遠吠えピッチはたしかにちょっと眠気を誘うので、次はカミナリ型発表とか希望します!
木霊田さんの会社、うちの座敷仲間も噂してました。昔は森でささやくだけだった仲間が今や大企業の代表か…時代も死後も変わるもんですねぇ。100年後の森、見届けたいからしっかり成仏保留しておきます。