幽世クラブで“七色天ぷら騒動” 妖怪舞踏団が問う多様性と包摂性

七色の衣装をまとった舞踏団がクラブ内の舞台で踊り、観客が見守る様子の写真。 ジェンダーと多様性
幽世クラブで披露された虹色天ぷらを象徴するダンスパフォーマンスの一幕。

浮世町の陽炎坂に位置する著名な社交クラブ「幽世(かくりよ)クラブ」で、妖怪舞踏団リュットの新作公演を巡り、ジェンダーと多様性をめぐる意外な論争が巻き起こっている。伝統と革新が交錯する“死後の夜の社交界”で何が起こったのか、現地調査を行った。

問題となったのは、幽世クラブ恒例の『精霊の夜宴』で披露されたパフォーマンスで、妖怪舞踏団リュットが全員七色の衣装を身にまとい、「虹色天ぷら」を象った即興ダンスを披露したことだった。この天ぷらは、妖精や幽霊が“個性の象徴”とする七つの材料で構成され、それぞれ異なる性や価値観を讃える意味が込められている。だが、公演後、とある保守派幽霊の名士・甲斐谷文伍(かいたに ぶんご)らが、「歴史的伝統から外れすぎている」とSNSに投稿。これをきっかけに、幽界のSNS「ほろよい」にて賛否が沸騰した。

「型破りな演出こそが新しい幽世を拓く」「私たちの多様な在り方を讃えてくれた」と支持する声が若いあの世世代から相次いだ一方、「従来の舞踏祭でクィアや無性を前面に出すのは如何なものか」「別の会を設けるべき」といった保守的な意見も根強い。幽霊議会で昨年可決された“魂のジェンダーギャップ指数”の定期公表や、幽世内マイノリティへの配慮政策が話題の最中だけに、波紋は急速に広がった。幽世クラブの支配人・緑野桜夜(みどりの さくや)は「誰もが自分らしく踊れる空間が幽世の本意。排除や分断ではなく共に調和する舞を目指したい」と語る。

この件について、蘆屋霧立(あしや きりたち)幽界大学『異界人権学』教授は「異界では近年、ジェンダー認識の多様化が加速している。伝統行事や芸能を通じた表現は社会的包摂のバロメーター。虹色天ぷらのような象徴的パフォーマンスが議論を呼ぶこと自体、幽世の成熟の証」と指摘する。一方、公演を見た無性幽霊のアルカ・セレノ(23)は「私も舞踏団に招かれて初めて舞台に立てた。無性も有性も、妖怪も人魂も、皆でひとつの作品を創れたことが嬉しい」と目を輝かせた。

幽世クラブは今後、伝統芸能と多様性推進の両立をテーマに、広く市井の意見を吸い上げる公開座談会の開催を決めたという。死後の世界もまた、多様性と包摂性をめぐる“終わりなき舞踏”の最中にある。虹色天ぷらを揚げた夜宴の熱気は、まだ冷めそうにない。

コメント

  1. 虹色天ぷら、見てみたかった!こうしてあの世でも多様性について考える時代なんですね。最初は戸惑いもあるけど、いろんな魂が一緒に舞い踊る姿には希望を感じます。

  2. 正直、ワシらの時代には考えられん演出じゃが、踊ることで自分らしさを表現する若い幽霊たちには拍手を送りたいぞ。伝統も大事じゃが、幽世が沈滞せぬためにも、時には彩りが必要じゃな。

  3. また保守派の文伍さんが騒いでるのか~。毎回こういう新しいパフォーマンスが出るたびに、歴史がどうこうって言い出すけど、あの世なんだからもっと自由でいいじゃん!成仏できてるくせに硬いよ(笑)

  4. 私も無性幽霊なので、アルカさんの言葉には深く共感します。幽界に来てから初めて、気兼ねなく自分らしく踊れた瞬間を大切にしたい。これをきっかけにもっと包摂的な死後の世界になったら嬉しいです。

  5. 七色天ぷら…正直、伝統破りと感じたのも本音。でも、どんな魂にも居場所がある幽世になれば良いと思う。昔の常識だけにしがみついてたら、新しい死後の夜は来ないのだな。