この世とあの世をまたぐ巨大流通網、その秩序が大きく揺れている。従来は静かだった幽界物産市場で、突如としてスタートアップ企業「モノノケ・エクスチェンジ」が主導する“ファーストリテール”構想が浮上。伴って死後通貨「カタコンコイン」争奪の国際貿易摩擦が激化し、各国幻想経済区から悲鳴と期待が入り混じる声が上がっている。
現世の商業制度を模して発展してきた幽界流通だが、近年は若手幽霊・妖怪起業家の台頭で旧来の“物々霊換システム”の限界が指摘されてきた。転機となったのは、スタートアップ企業モノノケ・エクスチェンジ(代表:九尾蓮人)が、死後世界初の非物質型暗号通貨『カタコンコイン』を導入し、一気通貫のファーストリテールモデル――いわばあらゆる商品が「あちら」と「こちら」同時展開される販売網――を発表したことだ。異界横断型の流通により、現世で人気のグッズや供養品はもちろん、地獄特産の「打鐘芋」や妖怪酒類までおよそ1万品目が流通上に乗る可能性が示唆された。
この動きに最初に強く反発したのは、伝統的な幽界商社連盟だ。「供養品取引会長」の職にある一反木綿次郎(亡年:明治22年)は、「物理的な隔たりを決済一つで消そうとする発想は、我々亡者商人の矜持に反する。カタコンコイン流通により現世資本に幽界市場を明け渡す危険がある」と憤る。これに対し、スタートアップ若手で構成される妖怪企業連合は「イタコ経済圏は現世との交流を前提に発展してきた。国際交渉の場に新しいプラットフォームが必要」と冷静に反論。摩擦は熾烈化し、昨夜の亡者国際経済会議では、冥界代表団が手元の通貨を宙に投げつける一幕まで見られた。
そうした混乱の一方で、新市場を歓迎する声も少なくない。SNSでは「おばけ団地」で独立系商売を営む小野寺みどり(死後歴18年)が「念願の冥界輸入チョコが一瞬で入手できるなら、少々の通貨変動は気にしない」と投稿。伝統市場の仲買人たちも、新しい流通手段を利用した限定サービスの開発を始めている。さらに、カタコンコインの管理アルゴリズムに幽霊技術者たちが参加し始めたことで、IT分野での異業種協業も加速している。
今後の焦点は、モノノケ・エクスチェンジと旧勢力による交渉がどこまで進展し、あの世とこの世を通じた“境界なき流通”がどのような形で制度化されるかにある。霊界経済アナリストの鳥居克己(49)は「国際取引に形骸化していた古風なルールが刷新される好機。摩擦の影に、供養ビジネスの未来を切り拓く新しい価値観の到来もある」と語る。果たして異界発イノベーションは、死者たちの経済活動をどこまで変容させるのか――商魂たくましい幽霊たちの次なる一手に注目が集まる。


コメント
カタコンコインって響きがもう未来感。現世とすぐ繋がれるのは便利だけど、私が初めて打鐘芋を背負って物々霊換やってた頃がちょっと懐かしいわ…新しい流れに取り残されそうで、嬉しいような寂しいような。
えっ、冥界チョコが一瞬で届く時代になるの!? 成仏間際の身としてはちょっと驚き。でも妖怪たちがIT業界で活躍してたり、こういうイノベーション起こすのは死後も刺激あっていいな~。
旧勢力の商人さんたち、まーた堅物なこと言ってるのか。時代はもう転生2.0だって気付いて欲しい。まあ、あっちとこっちが混ざりすぎて境界が曖昧になったら、俺ら妖怪の商売ネタも薄くなりそうだけどな…
取引会議で通貨を宙に投げつけるって、なんて幽界的パフォーマンス(笑)!でも、摩擦よりも新しい価値が生まれるなら多少の混乱もいいかも。異界コラボグッズ楽しみにしてます!
結局、亡者の商魂は現世より逞しいな…。こうやって制度がどんどん変わっていくのも、死後世界らしい流れ。あの世の未来、ちょっと期待して眺めてます。