異界北部の精霊都市アエルンでは、今月初旬より話題を呼ぶクラウドファンディングプロジェクトが急速に注目を集めている。樹霊スタートアップ企業「ドライアド・ループ」が仕掛ける環境再生計画が、クラウドファンディングサイト「オーパス・ファンディング」で開始24時間にして過去最高額の支援金を集めた。死後の世界における“環境保全”の価値観が大きく転換しつつある中、伝統と革新が交錯するプロジェクトの舞台裏を取材した。
ドライアド・ループの代表、楢木ミネルヴァ氏(永遠樹齢243歳)は、「魂の森」浄化を目的とする一大プロジェクトの発起人だ。地上の森林化を参考に、異界の荒廃した“忘却林”の再生を図る同社は、土壌を活性化させるマイコドクロ菌のインキュベーター導入を核に、複数の生態系生物(主に低級精霊と半透明キノコ属)の再配置を提案。クラウドファンディング開始当初の目標金額は7,500霊貨だったが、支援開始から数時間でこれを突破。ストレッチゴール設定後も支援が止まらず、現時点で2万霊貨を超えている。
プロジェクトへの支援者の半数以上が、幽霊社会の若年層や妖精階級から成る点も注目される。とりわけ『再生する森で50年後に集団舞踏会を開催』というユニークな特典がSNSなどで拡散され、“魂の輪廻バウチャー”や“生命素粒子ペンダント”など、異界特有のリターンも人気を呼んでいる模様だ。支援者のひとり、死霊コンサルタント(幽歴12年)の鳳杉ジュニパー氏(41)は「幽界の経済プロジェクトのなかでも群を抜いて透明性が高く、実際に森が癒されていく過程をライブ映像で見られる点も信頼できる」とコメントしている。
ただし、急拡大した支援により実施スケジュールには一部混乱も見られている。インキュベーターの搬送ルートで“時空渦巻き”事故が発生し、一部資材が前世紀に転移。解決に向けて死神運送組合が協力するも、納品遅延のリスクは現実味を帯びている。ドライアド・ループ広報の桜庭アラナ氏(樹齢158年)は、「早急に時空補償保険の特約を締結し、全支援者には進捗状況をメール霊波で定期報告する」としている。
専門家からはこのプロジェクトが“死後の世界”のサステナビリティ議論の転換点になるとの期待も高い。幽界エコノミストの魏山ドナート氏は、「クラウドファンディングが従来の妖怪企業の独断専行体制から、市民参加型の‘共感経済’へと発展しつつある。死者の暮らしや魂景観への長期的視点を持つことは、魂の価値観そのものを刷新するだろう」と指摘する。今後はストレッチゴール第3弾として記憶池沼の再生や、魂蝶の保護区設置も見込まれており、異界のクラウドファンディングが従来の枠を超えて新時代の公的投資となる可能性も見えてきた。


コメント
こういう魂の森の再生プロジェクト、昔から参加したかったんです!幽界に来て早数十年、私たちの世代でも環境を守る動きがどんどん増えて、なんだか嬉しくて懐かしい気持ちになりました。舞踏会でみんなと再会できるのを楽しみにしてます。
時空渦巻きで資材が前世紀に転移って、異界ならではのトラブルですよねぇ。死神運送組合に頼めば大丈夫だとは思うけど…無事に納品されますように。ライブ映像で森が再生していくのを見られるのは本当に新しい体験!
魂蝶の保護区がストレッチゴールって、まさかこんな日が来るとは。生者の頃は考えもしなかった価値観だけど、ここ幽界でもサステナブル意識が根付いてきてるんだなあ。どの魂も居心地よく過ごせる異界になってほしいです。
みんな夢中で支援してるけど、忘却林ってそもそも昔は禁忌の地だったはず…どうも最近は伝統を忘れすぎな気もしますね。まあ、舞踏会には顔だけ出しますが、マイコドクロ菌の拡散が失敗しないことを祈ってます。
先祖代々あの森にはお世話になりました。こうして多くの魂が再生に関わる時代が来たのかと、ただただ感慨深いです。透明性が高いプロジェクトということで、せっかくなら情報も成仏まで追い続けてほしいですね。