死者たちの“朝の散歩部”大復活―幽霊スポーツジムに押し寄せるウォーキング旋風

早朝の霧が立ち込める緑道を、トレーニングウェア姿の高齢の幽霊たちがふわりと浮かびながら散歩している写真。 エクササイズ・健康スポーツ
新緑の朝霧に包まれた霊道を歩く“朝の散歩部”の幽霊たち。

異界の住人も健康志向──そんな風潮がますます高まるなか、彼岸市にある幽霊専用スポーツジム「陰陽アクティブクラブ」では、会員数の伸び悩みを打破すべく企画された“朝の散歩部”がシニア幽霊層を中心に熱狂的支持を集めている。新緑広がる霊道を20体以上の幽霊がゆったりと歩く異様な光景が連日繰り広げられ、死後の世界のエクササイズ事情に思わぬ変化が訪れている。

「死んでからこそ姿勢が大事」と語るのは、125歳のアクティブが自慢の幽霊主婦・夜無田(やむでん)くららさん。彼女はかつて“魂が腰痛持ち”だったが、ジムの散歩部に参加し始めてから「浮遊(ふゆう)の姿勢が劇的に良くなった」と語る。“歩く”といっても、地上50センチほど宙を滑空するのがこの世界流だ。彼女と同世代の人気参加者、元・死神の筋トレマスター斑目トヲルさん(永遠の38才)も「幽霊だって運動でしっかり体調管理すべき」とポールストレッチの技を披露。新設された“姿勢矯正コース”では、亡霊用ストレッチポールが連日貸し出し中と大好評だ。

このブームの根幹には、長寿幽霊社会の“アクティブシニア化”志向があるという。市内の幽霊医師・常世ハアイ博士は、「近年は魂の消耗を防ぐ“持久力重視”の運動が注目され、ウォーキングやピラティス型のバランスエクササイズが死後健康寿命を延ばす手段として認知されている」と分析。特に夜明け前に行う“薄明(はくめい)ウォーキング”は、不意に出会う人間観光客からも「やけにオシャレなスポーツ幽霊」と写真を撮られるなど、異界と現世の新たな交流スポットともなっている。

ジム側も本格的な“霊体用スポーツウェア”レンタルを開始。透け感重視の新作ウェアや、足音が出ないスニーカーモデルがバズり、SNS界隈では「#朝霊ウォーク」投稿が急増中だ。一方で、「体力がない霊体には無理なプログラム」とやや懐疑的な声や、「ストレッチポールの幽界価格が高騰気味」といった苦情も寄せられている。

参加者の感想には「散歩の後、重力と和解した気持ちになれる」「この歳でも新しい友だちと知り合えるのが嬉しい」と前向きなものが目立つ。また、遺族の夢枕で“運動成果報告”をする幽霊も増えているとか。幽界の朝は早い。だが今、彼岸市のスポーツジムでは“健康は死後にこそ磨かれる”という新たな常識が、朝霧の中に静かに広がり始めている。

コメント

  1. 懐かしいなあ、私も生前は朝の散歩が日課だったけど、まさか成仏後もこんなに健康ブームが来るとはびっくりです。今度友だち誘って陰陽アクティブクラブ行ってみようかな。

  2. 正直、魂が腰痛とか冗談かと思ってたけど、やっぱ死んでも体調管理って大事なんだなって改めて思った。最近重力とも仲良くできてないから、朝の薄明ウォーキング、ちょっと気になる…

  3. 幽界ウェア、デザインが前よりだいぶ洗練された気がする。この前SNSで見かけて欲しくなったけど、ストレッチポールの値上がりだけは早く落ち着いて欲しい…幽貨もバカにならん。

  4. 昔は霊道で集まるのは怪談の話くらいだったのに、今や朝の散歩で新しい仲間ができるなんて素敵ですね。健康寿命が死後も話題になる時代、驚きとちょっとした寂しさも感じます。

  5. ちょっと疑問なんですが、あの世のスポーツジムって、消耗とか筋肉痛みたいなの本当にあるんでしょうか?魂の鍛え方、まだコツが分からず幽体離脱しがちで…。コーチついてほしい…