死後の日本列島の北西部、転生稲荷町。古より妖怪と幽霊たちの小規模な町だったこの地で、近年“地域消滅”の危機が叫ばれていた。しかし今年、空を舞う妖怪運送集団“マルシェブリンガー”の誕生が、町内外の商流とコミュニティのかたちを根底から変え始めている。
人間だった頃から商魂にあふれていたという代表妖怪・登戸レンゲ(年齢不詳)は、転生後、妖狐たちと共に地域の産品や手作りの品を妖怪商社として集め、町内外のマーケットに運ぶ仕組みを始めた。彼女たちの特徴は、“空中配送”。羽衣状の半透明ベールに包まれ、満月の夜ごとに幽霊と妖怪たちが連なって空路で商品を届けるのだ。転生稲荷町役場の幽吏員、鍛冶沼ヒカル(亡霊・102)は、「物流難が語られて久しかったが、彼女たちの出現で町は劇的に変わった」と感嘆する。
このマルシェブリンガー構想の核となったのが廃寺となった大羅院跡地の転用だ。ここに“異界コミュニティスペース”を設置。町の妖狐青年や川辺に巣食う河童、昼には人間界から遊びにくる死神たちが集い、技能交換やワーケーションが盛んになっている。元々閉鎖的だった転生稲荷町だが、幽霊出稼ぎ層や新規転生者との交流が活発化し、人口の流動化・経済循環を呼び込んでいる。
地域商社化を推進したレンゲ自身は、「十年前、町の幽会議で“絶滅危惧妖怪”指定を受けたことがきっかけ」と語る。「他所の町で消えゆく仲間を見て、流れを変えなきゃと。幽霊の子どもや妖怪高齢者も負担なく自分らしく役割を担える商流を目指した」。その言葉通り、現場では妖怪シニアが自家製の干し椎茸や川魚カレーの調合で活躍。夜な夜な開かれる交易市には、魂付き和菓子や“黄泉オーガニック野菜”など他所にはない品が揃う。
SNS上でも話題は尽きない。死後IT企業の経営者・真夜冬人(死神・189)が「こんなに多様な交流型商社は前世でも見たことない」とポストすれば、新規転生者や都会の幽霊フリーランスも「ワーケーションするなら絶対ここ」と多数推す。自治体も連携に乗り出しつつあり、今後は魂葬トークンを使った商品決済システム導入も検討されている。
一方で、外部の“悪戯狸派”による配送妨害や、過度な商流拡大で町の“魂気密度”が揺らぐ懸念も指摘されている。しかし、すでに“町の消滅”という最大の危機を目前でくぐり抜けたとの自負を持つ転生稲荷町。登戸レンゲは「生き直しも死に直しも、仲間と稼ぐ楽しさがカギ」と微笑む。異界と現世の間――小さな町から始まる民族経済の新しい物語が、夜空の彼方へと羽ばたいていく。


コメント
おお、ついに転生稲荷町がここまで変わるとは!昔は本当に静まり返ってて、魂も泣いてたのに…。マルシェブリンガーの空中配送、初めて見た夜は感動で震えたよ。町の連帯感って、消えそうで消えないもんだなあ。
空路で運ばれてくる魂付き和菓子、SNSで見てずっと気になってました!前世も転生後も、こんなワクワクするマーケットは初めてです。今度仲間の子河童とワーケーション行こうっと♪
まあ、悪戯狸派の連中には気をつけないとね。魂気密度の低下も心配だし、便利になりすぎてあの世らしさが薄れるのは寂しい気もする…でも、みんな元気そうだから、少し羨ましいかも。
昔あんなに寂れてた転生稲荷が、死後でこんな賑やかになるなんて面白すぎ。生前も自分は地方移住組だったけど、やっぱ地域は住人の魂次第だな。魂葬トークン決済?未来過ぎてついていけん(笑)
懐かしいなあ…私の成仏前は、大羅院も入るだけでゾクゾクしてたのに、今じゃコミュニティスペースなんて。本当に“生き直しも死に直しも”なのね。レンゲさん、見守ってます、新しいあの世の物語を!