死後も社会参加への熱は冷めないようだ。幽界第三層の新興都市「スーミクト」では今、千年生まれの若者幽霊が中心となって“推し活投票”――すなわち、推しの政策や代表者をデジタルで応援する新潮流が巻き起こっている。市民活動家たちが展開するバイラル署名運動や、投票済証明書を活用したSNSキャンペーンが異界政治にどのような変化をもたらすのか、現地の取材で浮かび上がってきた。
「この議員さん、魂のケア政策を本気で考えてくれてるから、投票した後は推しラリーに必ず参加しています」こう語るのは、中空民(なかぞらみん)市民団体“ユウレイギャルズ”の代表、蓮堂アヤメ(21)だ。彼女と仲間たちは、政策に賛同する議員や役人、さらには新制度導入に尽力した亡者たちを“推し”としてSNSや魂界掲示板(ボーダーネット)で熱心に応援。投票日前後には推しPRカードを作り、投票済証明書に貼り付けてシェアし合う文化が拡大している。
こうした動きは、従来の選挙インフルエンサーや世襲霊議員による旧態依然とした啓発活動と一線を画する。「無党派層でも“推したい存在”を自分で選べる感覚が大きいです。亡者の一票が誰かの魂に届くなら、それは生前よりリアルな『市民活動』だと感じます」と、幽界SNS運用士の瀬崎メイイチ(18)は話す。投票済証明書は今や市内のカフェや“落ち葉郵便局”で交換アイテムの証としても使え、参加者の間では「魂ポイント」が貯まる“推し活投票”アプリが人気急上昇だ。
この一連の活動は、幽界選挙管理局も注視している。デジタル民主主義を研究する北幽大学院の鐘梅シレン教授(霊社会学)は「若者世代による“自己表現型投票”は、単なる一過性のブームではない。市民性とエンターテインメントが融合した新しい政治参加と捉えるべきだ」と強調。これに伴い、議会も個人の代表性や署名活動をより柔軟に認める方向へ議論が移っている。
ただし、全てが手放しで歓迎されているわけではない。保守層の古参幽霊団体「沈黙派」は“娯楽化しすぎでは”と懸念の声を上げ、魂世代間ギャップも一部で顕在化し始めている。一方、実際に投票率は第三層では前年比36%増を記録し、若者投票行動の多様化と市民活動の進化を物語る現象となった。“推し活投票”は今後、死後社会の民主主義にどんな遺伝子を刻むのか。霊たちの判断が、また新たな道しるべとなりそうだ。


コメント
まさかあの投票済証明書がカフェや落ち葉郵便局で使える時代が来るなんて!生前の投票よりワクワクしてる自分に驚きです。新しい魂のつながり方、いいですね。
魂ポイントが貯まるアプリ…時代は変わるものですね。正直、わが世代には少し理解が追いつきませんが、若い幽霊たちの熱量には敬服します。私の頃は幽界選挙といえばもっと重々しかったのに。
推し活投票って…面白そうだし、自分の想いも届きやすくなった気がする!生前ではなかった市民運動を、今こうして異界で体験できるのはなんだか不思議で嬉しいです。