幽霊配達員チーム、“透明盗難”多発の霊界eバイク通勤路に独自パトロール網導入

霧がかった駐輪場で幽霊配達員と自転車型ドローンが並ぶ様子を写した写真。 eバイク・電動スクーター
新型防犯システムが導入された霊界のeバイク駐輪場。

近年、あの世の企業街区で急速に拡大しているeバイクと電動スクーター通勤。ところが、幽霊ならではの“透明化”能力を悪用した車両盗難事件が頻発し、霊界労働者たちの間で大きな不安を呼んでいる。そこで名乗りを上げたのが、顔も名前も知られざる配達員集団“叶隠(かながくれ)便”だ。彼らは独自の安全装置とスマートロック技術を備えた新生パトロール網を導入し、異色の自転車通勤防犯戦線を展開している。

この取り組みのきっかけは、半年前、業務用eバイクの盗難が続出したことに始まる。特に魂送り配送会社の新人配達員、葛原霊太(くずはら・れいた、享年31)も仕事道具を奪われ、日夜異界新聞を賑わせていた。加害者の大半は、自身を完全不可視化する“零視モータークローク”を悪用した盗人たち。既存の錠前や警鐘装置すら感知されず、所有者が原因も分からぬまま帰宅できなくなる例が相次いだ。

叶隠便のリーダー、五番街の梢木幻郎(こずえぎ・げんろう、享年56)は「幽霊社会にこそ、肉体や物体のみが対象の防犯技術では通じない」と語る。彼らが開発したのは、体温感知や重量反応に頼らず“気配波”の流れで稼働する新型スマートロック『カケシメ』。使用登録した魂固有の音波変調を解錠キーとし、幽体離脱中でもロック解除が可能。誤作動による“霊界遅刻”リスクを極限まで抑えつつ、ユーザー情報は死者公安局と自律的に連携される仕組みだ。

また、叶隠便は朝夕の通勤時間帯に合わせて自転車型ドローン巡回を開始。人間の目にも“ぼんやり浮かぶ”特殊ガスを用いたため、生者界境界駐輪場の利用者からは「目立つが安心」と声が上がる。五番街駐輪場の管理妖怪、月影うるら(つきかげ・うるら)は「今までは見えない犯人に身も心も不安だったが、最近は心の施錠も固くなった」と安堵を示す。ドローンには定期的に幽界警ら隊が搭乗し、違反車両や異常行動をリアルタイムで実況配信することで、コミュニティ全体での防犯意識向上も狙うという。

「幽霊なのに、自転車を盗まれて泣き寝入りなんて情けない」「せっかくの新型eバイク、魂まで盗まれそう」とSNSでは憂慮の声が絶えなかった。だが、叶隠便の新システム導入以降、盗難件数は前年比77%減。夜勤明け配達員の空居篠音(そらい・しのね、享年24)は「自転車も働く場所も、死後だって自分の意志で守りたい」と語る。死後の通勤も、意外に心がけ次第で安心が生まれるのかもしれない。

コメント

  1. 零視モータークロークの盗難が本当に厄介で困ってたので、叶隠便さんの巡回はありがたいです。死んでも通勤ストレスがあるなんて思わなかったけど、ちょっと懐かしい気分にもなりました。

  2. 魂の音波でロックする『カケシメ』、最先端すぎてびっくり。幽体離脱中でも安心って、現世だと絶対体験できない発想ですね。さすが異界、技術の進歩が楽しい!

  3. 正直、透明盗難って昔からあったけど、ここまで大胆になるとは…。魂送りの葛原さん、大変だったろうなあ。防犯も進化してるけど、いたちごっこは異界でも続くかも?

  4. 生者界の人たちにもドローンが可視化されてるって、なんだか不思議で面白いです。幽霊と人間が同じ駐輪場で悩む時代なんですね。次は魂追跡システムもできたらもっと安心できそう。

  5. 幽霊なのに通勤を守るためにパトロールとか、本当に霊界の日常って奥深いですね。昔は一反木綿の背中で通ったものだけど、今はeバイクなんだなあと少し切なくなりました。