幽界劇場、座席が浮遊し続ける前代未聞のプレミア上映――新作映画『無重力の遺志』に観客騒然

薄暗い映画館の中で、半透明の幽霊や妖怪たちが浮かぶ座席に座りながら驚いている様子の写真。 映画
プレミア上映中に実際に座席が浮遊し、観客たちが驚きと興奮に包まれた第二幕劇場の一場面。

死後世界の映画ファンに衝撃を与える事件が、幽界最大のシネコン『第二幕劇場』で報じられた。妖精出身の気鋭監督・花巻真霊(はなまき しんれい)による新作映画『無重力の遺志』の初上映にて、座席が突如として一斉に浮き上がり観客ごと場内を移動する騒動が発生。異界のメディアやSNS上で大きな波紋を呼んでいる。

問題の上映会は満席、観客の大半は生まれたて幽霊や東北百鬼組合の上級妖怪、一部は新入り精霊も含まれていた。映画のクライマックス、主人公が“死後の重力”から解き放たれる場面に合わせ、全席のアストラル浮遊装置が誤作動。座席はふわり宙に浮かび、3分間暗闇の中を好き勝手に漂った後、エンドロールの直前でようやく着陸した。

現場に居合わせた観客、幽霊主婦(86)は「作品の没入感が史上最高だった反面、思わず霊体が半透明になるほど驚いた。隣席の小妖精は浮遊中に逆さまになり、ポップコーンの粒が場内を舞った」と語った。一方、異界映画協会の評論家・黒蔦玖生(くろつた くお)は「座席浮遊の演出意図が十分であれば新たなシネマ体験として歓迎されただろうが、やや突飛すぎた」と苦言を呈する。

劇場の技術責任者・永斎真一郎は、上映後の記者会見で「浮遊制御装置のセンサーが、シナリオ上の“重力消失信号”に反応してしまった。誰もが死後世界で自分の“軌道”を生きるという映画のメッセージを、まさか機械まで真に受けるとは」と釈明した。監督の花巻は「『無重力の遺志』は新しい死後の価値観を問う作品だが、ラストの浮遊体験は意図していなかった。奇跡的にケガ人もおらず、ある意味で最高のプロモーションになったかもしれない」とコメントしている。

SNS上では「幽界映画史上初のアトラクション型上映」「本編より座席浮遊が記憶に残るのでは」など賛否両論が続出。死神映画祭運営委員会では、今後の上映にあたり“座席浮遊対策マニュアル”の作成を検討中だ。一方、興奮冷めやらぬ妖怪学生の間では「座席がもう一度浮かぶなら絶対リピートする」といった声も根強い。死後世界の映画館に、新たな“観客体験型映画”の時代が訪れる兆しかもしれない。

コメント

  1. いやー、まさか座席ごと浮かぶとは。長く幽界に住んでますが、映画館で肝を冷やすのは初めてでした!たまにはこういうサプライズも悪くないかも…次はちゃんとポップコーンを結界袋に入れておこう。

  2. 斬新すぎて笑いました。物理法則がゆるい死後世界ならではの事故ですよね…あの世の技術者ももうちょっと慎重に頼みます(笑)。でも浮かんだ瞬間、転生前の夢遊病を思い出してちょっと懐かしかったなぁ。

  3. うらやましい!私は上映2日目だったので通常の座席でした。クラシック幽体離脱しか体験したことなかったので、生きて…いや、死んでてよかったと思えるレベル。次は“浮遊確定”のイベント上映にしてほしい!

  4. 映画本編より座席浮遊が有名になっちゃったら、幽界シネマの行き先が心配です…。アトラクション化もいいけど、本来の映画愛を忘れずにいきたいですね。とはいえ、次回遭遇したら叫んでしまいそう。

  5. 私が生きていた時代に比べたら、ほんとに死後は自由だなあとしみじみ思います。こういうハプニング込みで幽界の日常が進んでいくの、決して悪くない気がします。成仏前にもう一度くらいは行ってみたいな。