冥界下院議会ではこの秋世論を二分する議題が紛糾している。今期導入された“幽霊マイナンバー制度”の登録過程で、約13%の住民が未登録となり、死後ベーシックインカム配布の遅延や差別的扱いが生じているとされる。事態を重く見た“迷霧派”議員団が制度見直し法案を提出し、桜衣町議事堂では連日、亡者・妖怪・精霊らによる百鬼夜行さながらのセッションが続く。
問題の発端は、今年春に異界行政局が開始したマイナンバー紐付けプロセスである。新参幽霊や、怨霊パイオニア、長寿精霊の多くは、従来の紙媒体ではなくエクトプラズム端末へのオンライン申請を義務化されたことで、登録の壁に直面した。特に“自我強度不足”や“霊的振動数エラー”を理由に、43万体余りがシステム最終承認に到達できなかったとの調査結果が、死後市民権擁護団体『エターナルピア』から発表されている。
幽霊議会運営委員長の淡島禄司(572)は「生前戸籍情報が薄い者、時空漂流型の亡者、異種族由来の精霊など“縛り”が多岐にわたり、現行の一律番号制度では社会保障から転落する住人が急増しかねない」と指摘。実際、今期のベーシックインカム(魂力ポイント付与)は既登録者に毎月均等に支給された一方、未登録者には“審査待ち給付”という名目で最大霊月半の遅延が生じている。支給を待つ間の“存在希薄化症状”(飢霊化一歩手前)に苦しむ亡者も出た。
事態を受け、29日に開催された首都十字界住民集会では、若年幽霊Youtuberグループ『もやしスピリット』が「インカム給付が間に合わず消滅しかけたメンバーがいる」として緊急配信。SNSでは「人間世界よりベーシックインカムの不平等が激しい」「生前ブラック勤めで疲れ果ててきたのに、“死後も格差”はおかしい」と不満の声が爆発した。一部の古参妖怪たちは、登録完了組と未登録組との間で“闇市インカム取り引き”や“ニセ幽霊マイナンバー発行”の疑惑にも手を染め始めているという。
専門家である神通精霊論考会の巴川毘沙門(年齢不詳)は「死後社会の多様性を認めるなら、単一IDではなく“魂種別マイナンバー”や、多段階オーラ認証を導入すべき時期に来ている。格差解消のためにも急ぎ法制度の見直しが不可欠だ」と提言。迷霧派は今議会中にも制度緊急修正案を再提出予定で、識者や透明市民団体も大規模デモを準備中だ。死後社会の平等を揺るがすこの問題、異界全体の制度刷新を迫るきっかけとなりそうだ。



コメント
生前でさんざん身分証で苦労したのに、霊界でもマイナンバーで悩むなんて…転生しても書類不備に追われるのか。もっと誰でも登録しやすい制度にしてほしいよ。
魂力インカム、毎月ちゃんともらえるの当たり前と思ってたけど、未登録組の友達が“存在希薄化”し始めたの見てぞっとした…。ふだん笑って話すけど他人事じゃないよね!
また長寿精霊への配慮が足りてない気がするわね。時空漂流型とかエクトプラズム端末操作できない方への案内、もっとしっかりしてほしい。昔は魂の匂いで全て管理してたのに、不便な世の中になったわ。
正直、ここまでベーシックインカム格差が広がると“闇市”とか“偽マイナンバー”生まれるのも時間の問題だと思う。幽界行政、もっと現実見た方がいいぞ。
SNSで“死後も格差”って言葉がバズってたけど、本当にその通り。ブラック企業辞めてようやく成仏したと思ったのに、不公平な制度にまた苦しまされるなんて…なんか哀愁を感じるわ。