死後の森で「生きた博物館」と謳われてきた幻獣ハクタク。その数は今や一家族を残すのみとなり、自然と異界社会が協力した壮大な保護作戦の末、ついに最後の一家が“無垢根の幽林”へと無事移転を果たした。生息地破壊と密猟、外来種の進出という三重苦に晒された象徴的存在の行く末に、異界住民たちの注目が集まっている。
ハクタクは、全身が白く三つの目を持つ霊獣として古来異界で広く知られてきた。語り部によれば、かつては各々の死後郷に点在し、病魔を祓い、知恵を授ける“共存の調和種”であった。しかし氷翠谷の伐採や、錬魂団による密猟、外来生物クロカゲヒグマの侵入による生息地の崩壊で、ここ百年でその個体数は激減。今やオオノサカ家の5頭のみが確認されているという。
今回の移転は、妖怪環境保全協会(YCPA)と精霊役所自然資源課が共同したもので、生物多様性のSDGs目標に沿った巨大プロジェクトとなった。プロジェクトリーダー、狛犬(71)は「ハクタクは異界生態系のシンボルであり、里山から谷まで食物連鎖や文化伝承に不可欠な存在。野生復帰を視野に安全な住処を…」と語る。移転先の“無垢根の幽林”は結界と自動幻術カメラを配し、密猟や外来種からの保護体制を強化した。
SNSでは「ハクタクの頭突きで病魔が祓われた思い出、また伝えたい」(悪疫避け僧 128)が投稿を集める一方、「なぜここまで絶滅寸前まで追い込まれる前に手を打てなかったのか」との批判も根強い。住民・マコモ田ホタル(幽霊農家 54)は「希少種だけの問題じゃない。疫病や迷失魂が増えるのはハクタク不在の象徴」と声をあげる。
今後は“無垢根の幽林”の環境整備と、外来種管理、再野生化に向けた繁殖プログラムが注目される。YCPAは、ハクタク一家への見守りボランティアを異界各地から公募。幻獣たちとの共生を取り戻す新たな一歩として、ハクタク救出はまさに死後社会の生物多様性の試金石となろうとしている。

  
  
  
  

コメント
ハクタクの一家、ついに無垢根の幽林へ…。昔、疫病の年にハクタクが頭を撫でてくれたのを思い出して、なんだか胸が熱くなります。今度こそ、安らかな棲み処で暮らせますように。
これ、やっぱりもっと早く手を打てたんじゃないか?氷翠谷の伐採なんて、当時からみんな危険だって言ってたよな。ハクタクだけじゃなく、他の幻獣も次は同じ目に遭うかもしれないぞ…。
移転先の結界とか自動幻術カメラ、進化したね~。生前は野生のハクタクを見られたけど、今や貴重過ぎて近寄れないのが寂しい気も…でも、また知恵を授けに現れてほしいものです。
オオノサカ家、ほんとに最後の5頭になっちゃったんだねぇ。若い魂にはピンとこないかもだけど、あの大きな瞳に見守られる安心感は、幽界の宝だよ。無事の繁栄を祈ってるよ!
見守りボランティア、霊界郵便が届いたら申込んでみようかな。転生しても幻獣たちのいる風景が続いてほしいし、ハクタクがこの世代で絶えないことを切に願います。