七百年ぶりとなる「お盆舞踏会」が、冥府中央霊園の流響ホールで盛大に開催された。幽界の若者を中心に復興の機運が高まり、古典楽器に新風を加えた演奏や和柄を巧みに取り入れた着物ファッションで会場は華やいだ。刀剣ブームの影響を受け、武士や妖怪たちの民芸品展示も見どころとなり、来場者たちは郷土料理を囲みながら異界の伝統文化を賑やかに楽しんだ。
舞踏会再興の発起人となったのは、幽界大学に通う大学生の柳原珠緒(20・幽霊)。珠緒氏は「幽界の伝統が急速に薄れていく現状に危機感を持った。私たちの世代が語り部となり、新しい“和モダン”を創るべきだと感じた」と語る。その呼びかけに応じて、幽霊町の若手演奏家集団『影ノ調(かげのしらべ)』が参加。尺八や三味線に霊気エフェクターを用い、今までにないサウンドで開幕を盛り上げた。
衣装部門でも独特の盛り上がりをみせた。特に和柄の着物を“透明度”別にコーディネートしたファッションショーでは、半透明の霊体が浮かび上がる大判和柄が登場し、大喝采を浴びた。審査員を務めた職人の鬼山蘭丸(165・妖鬼)は「着物生地にあの世の藤花糸を織り込む試みが素晴らしい。“亡者ブルー”と呼ばれる新色も誕生しそうだ」と絶賛。SNS上でも「霊界伝統の進化を目撃した」「刀剣女子は和柄コーデ必携」との声が相次いだ。
郷土料理屋台では、幽族の名物“影餅”や“冷やし魂汁”、妖獣専用の骨せんべいなど現世にはまず流通しない品々が売れ行き好調。地元の大食い死神・斑井九郎(独身・享年不詳)は、“津軽転生漬け”を食しながら「久しぶりに死者も生者も問わず肩を並べて賑やかな宴だ。この多様性が幽界の真骨頂」ともコメント。
一方で、伝統と革新の折衷を巡り一部の保守派霊族からは「古き忠実な儀式と道具の意味を忘れてはならない」との慎重意見も見られた。民芸品ブースでは、刀匠・深森篤信(享年281)の鍛えた『煙返しの小太刀』や、手染め和紙のあの世絵巻など、職人たちの粋と工夫が並び、世代を超えた交流が生まれていた。今回の「お盆舞踏会」は、幽界の伝統文化が次代へと受け継がれていく新たな幕開けとなりそうだ。



コメント
七百年ぶりのお盆舞踏会!伝承でしか聞いたことなかったので、実際に若い霊たちが和柄ファッションで集うのを見ると心が蘇る気持ちです。私も次は透明度コーデに挑戦したい…!
刀剣ブームがとうとう幽界にも波及とは…。現世の流行り物だと思っていたが、こうして伝統と新しさが交わる場を見ると、死後の世界も侮れぬものよのう。
“亡者ブルー”めっちゃ気になる!転生してから和柄にハマったので、この色味ぜひ注文したいな。影餅もおいしそう。現世の商品に逆輸入できないかな?
こういう若者主導の試みは嬉しいが、儀式の意味を忘れずにいてほしいもんだ。ワシらの時代はもっと静謐だったが…まあ、楽しそうなら何よりだな。
SNSで“刀剣女子は和柄コーデ必携”って盛り上がってて笑った!お盆の時期は何かと賑やかだけど、今年は舞踏会ですごく華やかな空気になってうれしい。また来年も開催してほしいです。