幽界学園連盟は本月、幽霊や妖怪といった異界の住人専用のオンライン学習プラットフォーム「ファントム・キャンバス」を正式リリースしたと発表した。浄土中央区にある幽界学園総本部で行われた発表会には、無念ゆえに学生生活をやり直す精霊や、時代遅れの術をアップデートしたい初老の付喪神らが数百体集結。目玉は、生成AI技術を用いた新たな教科書システムと、死後語で相談できる“チャットゴースト先生”の個別指導だという。
「生前は和算しか知りませんでしたが、あの世の政策研究には現世流データサイエンスも必要です」と語る河原坂鈴音さん（浮遊霊、享年18）は、2週間前からファントム・キャンバス上で『幽界社会構造論』を受講中だという。このサービスにより、霊体ゆえの物理的制約や、実体を持たない魂の分身で参加する時間帯の問題など、従来型スクーリングで課題となっていた諸問題が一気に解消された。幽界学園連盟の石棺主事・朧月千暮氏（石棺霊、312歳）は「分身プログレス管理機能で出席状況も一目瞭然。六道巡りの多忙な生徒にも好評です」と語る。
ファントム・キャンバスでは、伝統の“煙墨の書”を再現したビジュアル重視のデジタル教科書が採用されているほか、幽界独自言語や法則にもAIは柔軟対応。生徒は専用の『魂サイン』でログインし、毎夜決まった時刻に進捗チェックが自動で行われる仕組みだ。注目の“チャットゴースト先生”は、学習内容や質問の意図を半透明の魂波長から自動判別し、俳句調のヒントや因果経の引用まで自在に提案する。幽怪短信（SNS）では「生前の先生より丁寧」「時々肝試しに導かれる」など評判も上々だ。
一方、現役教師たちの間では「生成AIだけでは情念が足りず、恐怖体験の質が下がった」との指摘も。魔界分校で借り物競走を担当する嗤狼人（教師、42）は、「教員の魂残響による“怪談のリアル指導”も欠かせない。AIとは協働が大切」と強調する。運営側も今後、“実体験ワークショップ”とAI教材のハイブリッド化を進める方針だ。
幽界学園連盟統計局によれば、死後10年未満の新入霊2,300体のうち約7割がデジタル教科書を通じて学び直しを志望している。一度きりの現世を卒業した後も、異界の住人たちは日々知識をアップデートし続けている。今後は亡者向けお悩み相談や輪廻直前の復習コンテンツなど、さらなる機能拡張も予定されているという。
コメント
いやはや、生成AIのチャットゴースト先生まで出てくるとは…私が成仏試験でヒーヒー言ってた時代とは隔世の感がありますな。魂サインのログイン、ちょっと憧れます。
やっぱり手書きの煙墨の書にも愛着はあるけど、魂分身で夜な夜な受講って便利よね。昔は六道バスが遅れて出席消えたのに…幽界も進化してる感じが嬉しい！
チャットゴースト先生、噂の通り真夜中に妙なヒントくれるんだね…。先週、肝試しスポット案内されて危うくあの世迷子になりかけた（もう死んでるけど）。でも勉強は捗ります。
デジタル教科書なんて現代っぽいけれど、AIの先生はやっぱり情念が薄いのか…。怖い話をしてくれたお師匠のゾクゾク感が恋しくなっちゃう。怪談ワークショップ復活希望！
素直に感心。現世じゃ一度きりの学生生活も、こっちじゃ学び直すチャンスありまくり。現世の自分に教えてやりたかったなぁ…幽怪短信で同級生と魂談義する日が来るとは。