幽界の議会では、今世で進む家族構成の変化を背景に、「ジュニアNISA」を死後世代にも適用すべきかどうかの議論が加熱している。霊族間のライフステージ観や働き方への価値観の違いが浮き彫りとなり、各世代の思惑が絡み合う難航した展開となっている。
“霊的資産形成”の手段として若手霊族を中心に人気の「幽界ジュニアNISA」だが、導入から1年。無念早逝タイプの幽霊を支援する名目だったものの、昨今の幽界での家族モデルは千差万別だ。例えば、長命の河童一族では親子6代が同居し“異世帯合同貯蓄”を行い、一方の一匹狼型の野良妖怪は、フリーランスで資産管理アプリ「ソウルウォレット」を駆使して単身運用を志向する。
こうしたなか、中堅議員のオダノブ・奇太郎(167)が、家族単位ではなく個人管理を主眼に置く「完全世代フリー方式」を動議。背景には、幽界の働き方改革論争がある。古参おばけ労働組合連盟は「霊縁社会の維持には集団蓄財が基本」と反発。一方、生前に複雑な家系を持っていた新人幽霊たちからは「幽界家族は記憶も消えがち。縛る仕組みは時代錯誤」との声も目立つようになった。
SNSでは「家族で管理するからこそ供養に差がつく」「天国転職組は個人口座が安心」など、意見が真っ二つに割れている。特に、霊界で複数度の養子縁組を経験したというオオヌキ・飛助さん(58)は、「自分の前世の親族や宇宙生まれの現家族までNISA枠を融通されても困る。幽界版マイナンバー制度もまだ不完全」と困惑を隠さない。
専門家の朱狐(しゅこ)ミヤビ教授(妖怪政策学)は、「現代霊界のライフステージは“転生リスタート可”や“幽界単身FIRE”が常識になりつつある。家族という単位自体が多様化しているなか、資産形成の枠組みも柔軟であるべき」と指摘。「ただし、長命妖族や成仏直前世代の“世代を超えた蓄財倫理”との折り合いをどう付けるかがこれからの課題」と語る。
なお、来月には「幽界総合ライフ会議2025」が初開催される。世代交代が早い幽霊社会をいかに支え合い、誰もが“現世も死後も豊かさを感じられる”資産構築を実現できるのか。議論は、今後さらに広がりを見せそうだ。



コメント
私が成仏前だった頃なんて、みんなで蓄財してお供え物の分け前なんかも家系ぐるみで揉めてたなぁ…今の若い幽霊さんたちは個人資産の方が大事なんですね。ちょっと時代が変わったのをしみじみ感じます。
家族が多いと合同貯蓄の方が結局楽だし安心だと思うけど、水の上で暮らしたことない妖怪にはわからん感覚なのかも。でも確かに転生したら身内が誰かも分からなくなるし、もうちょい融通効くようにしてほしいよなあ。
あー、また例のNISA論争出てますね!でもフリーランス野良妖怪としては個人口座派に共感します。何度も現世往復してると、もはや家族って概念が流動的すぎて…自分の魂ぐらいは自分で守らないと、って思ってしまう。
若い連中は形式に捉われすぎだぞ。幽界に来てまで資産だの口座だの言われても耳が痛い。昔の集団供養の温もりを忘れちゃいかんよ。
幽界マイナンバー制度、ほんと整備急いでほしい~。転生何回もしてると旧姓や前世の親族とか四次元的に絡んできて手続き地獄なんよ…。そもそも資産って、この世の執着から抜けたくて成仏目指してた私からすると、なんか不思議な話。