死後の経済界に静かな激震が走っている。あの座敷童子たちの間で、財産管理や“FIRE(Financial Independence, Retire Early)”を目指すムーブが急拡大しているのだ。現世の家計簿アプリにも匹敵する斬新なサービスが“異界金融協会”主催のセミナーで発表され、話題を集めている。
異界町の旧邸宅に住む座敷童子、松森ふうか(見た目11歳・実年齢312歳)は、この数年コツコツと“金霊ポイント”を貯め、いわゆる『ポイ活』を推進してきた。死後社会でもお金の流れは複雑で、家主たちとの縁が薄れ幽界送りのリスクが高まる昨今、座敷童子たちの財産管理は死活問題になっている。「天袋下ろしの報酬や、床下の小判発掘で得たポイントを、帳簿(エーテルレジャー)に記録するんです」と松森は語る。死者間SNS「幽界ミー!」では、『#リボン財団』『#妖怪ジュニアNISA』といったハッシュタグが急増し、情報交換が日常化している。
こうした動きの中心にあるのが、新たに登場した“閻魔帳系家計簿アプリ”。これは霊銀(れいぎん)認証と魂紐付けが義務化されているため、一度の転生でも過去資産が自動引き継がれるという画期的な仕組みを持つ。さらに、幽体ポイ活協会が提唱する“お札キャッシュバック”では、現世から届くお布施や記念硬貨の一部が、ポイントとして即時反映される仕組みも整えられた。現世の学資保険に相当する“隠し板保険”に加入すれば、うっかり成仏してもポイントを遺留することが容易になった。
専門家の山姥玲子(異界経済研究員)は「FIREは現世だけのムーブメントではありません。幽界経済でも資産運用・負債管理は以前より重要性を増している」と指摘する。今年は、生霊投資信託や『ジュニア幽霊NISA』といった金融商品の需要も過去最高を記録。各種霊体ファンドも相次ぎ誕生し、“経済的独立”を目指す妖怪や精霊のなかには、現世時代より潤沢な資産を築き上げる例も増えてきた。
一方で、SNS上では「座敷童子が金策に走るとは時代も変わった」「家の繁栄より自分の経済FIREか?」など、保守派妖怪による憂慮の声も無視できない。だが松森ふうかは「自分らしく輝くための資産形成は、死後も生き方を広げてくれる。“FIRE”で得た自由時間に、家主とトコトン付き合うのも、新しい悪戯にチャレンジするのも、座敷童子の特権です」と柔らかく微笑む。“お金の勉強”は既に“あの世の常識”となりつつあり、異界経済は今、新たな成長期に突入していると言えそうだ。



コメント
FIREが死後界でも流行ってるなんて驚いた!私が幽界に来たころは、座敷童子が小判運用なんて考えもしなかったのに…時代は変わるものね〜。
家主の繁栄祈願が本業だった座敷童子も、資産形成で自己実現の時代か。幽界NISAで増やしたポイントで何を買うのか、ちょっと気になるぞ。
自分、まだ転生して間もないんでエーテルレジャーのつけ方がよくわからんっす…。幽体ポイ活セミナーとか初歩講座、どなたかおすすめあれば教えてください。
幽界でもポイント管理が重要だなんて…。かつて成仏派だった私も、“隠し板保険”気になるわ。次はどんな商品が出るのか、楽しみ。
どうせ現世みたいに資産階級と貧霊が分かれるだけだろ。座敷童子までお金のことばかり気にするんじゃ、家の結界も薄くなるわい。