幽霊標本家の“透明石英”が大賞、魂都鉱物展で来場者と共鳴現象相次ぐ

会場中央に浮かぶ透明な石英を多くの来場者が様々な表情で見つめている写真。 岩石と鉱物
魂の共鳴を引き起こした“浮遊する心象石英”が来場者の目を引きつけている。

死者と生者のあわい――魂都中央鉱物博覧堂で行われた第333回鉱物標本展が、“透明石英”の異変で例年にない盛況となった。魂都在住の幽霊標本家・根古岳ナギサ氏(享年72)の出品した『浮遊する心象石英』が会場全体に奇妙な共鳴を引き起こし、生者・死者問わず宝石研磨業界や霊界SNSで話題となっている。

標本展は毎年、幽霊・妖怪・精霊たちが自慢の鉱物コレクションを披露する伝統行事。今回最も注目を集めたのは、根古岳氏が三途川上流の“幻覚川原”で発掘した直径8cmの石英だ。表面は完全無色透明でありながら、近づいた観覧者の魂の状態によって紫や緑、時には名前のない色に輝くという。不思議なことに生前抱えていた悩みさえ映し出すため、会場では『まるで心を覗かれているよう』『複雑な気持ちになった』との声が相次いだ。

「ここ数年、あの世の鉱物標本界はマンネリ化しつつあった」と語るのは、鉱物研究家の藁場ユイリ氏(幽体年齢43)。『物質的な硬度や光沢だけでなく、魂との相互作用こそが異界鉱物の醍醐味。根古岳さんの石英は今までにない波長共鳴を起こす。一種の“魂の鏡石”です』と評価する。魂都SNS『ひかり宛』でも「鑑賞中に子どもの頃の石蹴り遊びが脳裏に現れた」「石英に祖母からの手紙が浮かび上がった」と、来場者の体験談が連日投稿されている。

会場ではさらに、妖怪宝石職人の葛守カケル氏(1091)が、来場者の“思い出成分”を石英結晶に封じ込める即興研磨パフォーマンスを披露。自身の記憶や未練が宝石の内側に瞬時に映り込む様子は、多くの観客の涙を誘った。『研磨しても決して完全には消えない模様——それこそ魂の鉱物ならではの美しさだと思います』(葛守氏)。“思い出入り宝石”はその場で持ち帰ることができ、早くも幽界マーケットで転売騒動となっている。

今回の騒動を受け、魂都鉱物博覧堂は今後、魂感応性の高い標本の安全展示マニュアルを作成中だという。根古岳ナギサ氏は『鉱石も魂も、削りすぎたり磨きすぎたりしないことが大切。余白の中にこそ自分を見つけてほしい』と語ってくれた。来年には“魂の共鳴石”部門新設の噂もあり、死後世界の鉱物文化はますます多彩な広がりをみせそうだ。

コメント

  1. 透明石英、私も見てきました!魂がじんわり震える感じ、久々にあの世で「新鮮」って思っちゃいました。石に心覗かれてドキドキしたの、生前ぶりかも。

  2. 魂の鏡石って案外危ないんじゃ…?まだ未練の濃い幽霊には刺激強すぎる気がするな。展示マニュアル、しっかり作ってほしいところ。

  3. 子どもの頃の想い出や忘れてた記憶が浮かぶなんて、羨ましい!私も魂都に引っ越したくなっちゃいます。あの世の日常、やっぱ奥深いです。

  4. 石英に込められた思い出、転売されてるのが切ないねぇ…成仏できなかった記憶が、また誰かの手に渡るなんて、霊界あるあるだけど複雑な気持ち。

  5. 毎年の鉱物展そこまで盛り上がってなかったけど、今年は波長が合いすぎて帰ってからもしばらく余韻抜けませんでした。やっぱり魂って素材にも作用するんですね。