深夜0時過ぎ、霊都(れいと)北部の幽谷区を襲った異例の“逆流豪雨”が、霊魂住民たちに新たな防災意識の波紋を広げている。数百年忘れ去られていた幻影湖から突如湧き出した膨大な水流が地表を逆さに駆け上がり、霊軀家屋および浮遊道路に想定外の被害をもたらした。現場では、死者向け災害医療チーム「ドクター冥医団」が駆けつけたほか、最新の緊急地震速報にも独自の異変が記録された。
目撃した現地住人の一人、シラズキ・イルカ(幽霊・172歳)は、「久々に静かな夜を楽しんでいたら、床下から水しぶきと共に”湖の歌声”が響き出した。物理法則も無視する勢いで家具が天井に張り付き、金縛りすら解けました」と興奮気味に語る。水流は湖底から天井へと逆巻き、時折イワナ型の霊魚や歴史的な文書が浮上する、摩訶不思議な光景が20分間続いた。幽谷区役所によれば、こうした現象はここ2世紀でも前例がないとのこと。
今回の災害に対応する形で、死後の世界の防災訓練に一石を投じたのが、『幽界災医ネットワーク』の迅速な医療展開だ。代表のクロマハ・サグラ医師(死神・402歳)は「魂体の濡れや霊的凍えによる分身消散症が2件確認されましたが、転生蘇生装置で無事復旧。霊鎧の着用や次元防水帽の導入を今後も呼びかけます」と語る。現場に急行した新米医霊のビオラ・バングモ(職業:災害医療研修生・没後33年)は、「初めて流された先が逆さ虹の世界で、教科書にない応急処置を経験できた」と振り返った。
一方、豪雨の直前には地底から地鳴りならぬ”魂鳴り”が検出され、死後世界独自の緊急地震速報システム『トドロキ霊波網』が起動。利用者の手元には、「幽体シェルターへ避難」「浮遊生物に乗らないよう注意」など具体的なプッシュ通知が即時配信された。町内会SNSには「また幻影湖が悪さしたのか」「去年の霞霧竜巻からの連続災害、しっかり備えたい」など住民の声が並ぶ。
災害後の翌日には、幽谷小学校で初の「逆流災害」を想定した防災訓練が実施され、児童たちは水泡の中を泳ぎつつ、叫ぶ猫又先生の指導で“魂の浮上法”を身につけた。霊都気象庁のアサヒナ・ナミ職員(気象精霊・37歳)は「死後地域でも予測システムの拡充が急務。逆流豪雨の再発防止に向け、湖底談判会を招集する予定」と表明した。今後、霊界社会における新たな自然災害対策のモデルケースとして、全国の幽都府県からも注目が集まっている。



コメント
魂体が濡れるなんて久しぶりに聞きました……。冥医団のみなさんには本当に感謝しかありません。2世紀ぶりの幻影湖の逆流、歴史の生き証人として立ち会えた気分です。次元防水帽、私ももらっておこうかな。
魂鳴り速報が本当に役立つ時代が来るとは思いませんでした。うちの浮遊玄関も天井に張り付いたので、家具ごと“浮かされた”のは私だけじゃないと知りちょっと安心……でも、魂の浮上法を小学校で教えるようになったのは驚きです。時代ですねぇ。
医霊さんも大変だ。分身消散症って意外と身近なんですね。どうせなら逆さ虹の世界、ちょっとだけ体験してみたかったです(帰れるなら…)。災害が増えてるし、湖底談判会の成果に期待します。
幽谷区、またですか……。霞霧竜巻の後で今度は幻影湖の逆流とは、霊都の自然は気まぐれが過ぎますね。私の時代はもっと静かだった覚えが。今は亡骸も落ち着いて眠れない。
逆流豪雨、子どものころに伝説でしか聞いたことなかったので、実際に現象が起きるとは感慨深いです。叫ぶ猫又先生の“魂の浮上法”指導、なつかしさで泣きそうになりました。こんなときこそ、あの世の団結力を見せたいですね。