近ごろ幽霊町エーテル通りでは、人間界から漂着した“幻のペットボトル”を巡る賑やかな騒動が住民たちの間で巻き起こっている。無害だったはずの廃ペットボトルが、変異マイクロプラスチック霧となって夜の町を漂いはじめ、希少な循環資源として不思議な価値を持つようになったのだ。町内では急きょ回収ラリーが企画され、異界ならではの奇妙なリサイクル合戦が幕を開けている。
エーテル通り居住区の管理長、鬼灯カグラ(幽霊・没後143年)によると、最初に騒動が発覚したのは先月下旬。月明かりよりも淡い銀色の霧が出現し、町民の体にしつこくまとわりつく被害が相次いだ。『普段、物質ごみは霊的転送ユニットで処理できるのですが、ごく一部のペットボトルだけは説明不能な成分で異界空間にとどまるんです。しかも最近、それが勝手にサブリミナルな微細霧となって町中を彷徨い、髪の毛や着物に静電気みたいに張りついて離れない』。住民たちは困惑する一方、拾えば拾うほど“エコ霊ポイント”が付与される新制度に早くも興味津々だ。
このポイント制度は、“ゼロウェイスト霊界連盟”が始めたもので、ペットボトル一本につき5ポイント、不法投棄現場での発見にはボーナスが上乗せされる。すでに回収されたボトルは、町のお化け職人たちによって“幽霊コンポスト炉”で分解・流用され、魂のエネルギーを増幅する静音式ランプや、妖怪たちの風呂場を浄化する循環式浴槽へと生まれ変わる。『これは単なるゴミ拾いじゃありません。新たな資源循環文化の萌芽。拾い集めて眺めているだけで、なぜか生きていた頃の思い出や、遠くの世界を見渡すような感覚がよみがえるのです』と若手ランプ職人の黒葛ソウイチ(妖怪・年齢不詳)は語る。
SNS上では『あの世にもゴミ問題が?』と人間界から驚き声が上がる一方、妖精目線で『香りつきペットボトル霧はちょっと好き』『輪廻ポイントで来世ランクアップするなら拾いたい!』というコメントも多い。町の片隅ではカッパ族の子どもたちが競ってボトルを探しに走り回る姿が見られ、回収箱の前に長蛇の列ができるなど、廃棄物管理が住民の新たなコミュニケーションの場となっている。
エーテル通り管理長の鬼灯カグラは『廃棄物を忌避するだけでなく、異界の文化財として活用する柔軟性こそ幽霊町の誇りです。循環資源としての価値を見直し、環境負荷の小さい暮らしを目指したい』と強調する。今後は回収物の一部を人間界の“夢の中フリーマーケット”で無断展示する計画も浮上。死後社会でのゼロウェイストと新たな交流の輪が、静かながらも広がりを見せている。


コメント
この前、うちの墓の近くにもその“銀色の霧”が襲来してきて、羽織にくっついて取れなくて大変でしたよ。まさかペットボトル由来だったとは…幽界にもこんな現代的な悩みが来る時代なんですね。
エコ霊ポイント制度、ちょっと面白そう。転生前に人間界でゴミ拾い大会に参加したのを思い出しました。異界でもポイント集めで輪廻がちょっぴり楽になるなら、本気出して集めちゃうかも。
エーテル通りのカッパ族の子たち、昨日も回収ラリーで騒いでて微笑ましかったです。人間界からの落とし物が異界のコミュニケーションになるなんて、なんだか不思議ですけど素敵だと思います。
“幽霊コンポスト炉”なんて発想、流石あの世ですね。けど、いつかはペットボトルも霊的転送ユニットで完全処理できるようになってほしいものです…着物クリーニング代、バカにならぬので。
記事読んでちょっと懐かしい気持ちに。生きていた頃、お祭り帰りに飲みかけのペットボトル持って歩いた夏の夜を思い出しました。今は霧になったけど、異界でも人の縁や思い出は巡るんですね。