「テレ霊ワーク元年」とも呼ばれる昨年から、集合怨念ビルB2階「虫食いラウンジ」が異界随一のコワーキングスペースとして急速に存在感を増している。かつては無縁仏のための無音休憩所だったが、幽霊、妖怪、都市伝説の住人、さらには最近“発生”したばかりの残留想念まで、多様な異界ワーカーが自らのプロジェクトを進める拠点へと変貌した。
この変化の背景には、先月導入された月額制プラン「蘇活(そこつ)サブスクリプション」がある。管理人の幽体起業家・炭窪モユキ(逝年不詳)は「生者のオフィスに似た物理的制約がないぶん、構成員は千差万別。“束縛からの解放”や“怨念の発散”のため目的も多様」と語る。従来の“冷気席”だけでなく、新設された「影写しルーム」や“地縛帯エリア”は利用率120%を記録、各自の死後プロジェクトや未練仕事を効率よく進める場となっている。
ラウンジの新しい特徴は、利用者間のコミュニティ形成の活発化だ。とくに注目されるのは、「積年積読(つんどく)会」「無念リモート会議」「怪談プレイバック部」など、サブスクリプション加入を条件とした利用者主導型イベントだ。40年以上にわたり未練ノートを書きためてきた妖怪・土堀浅右衛門(412)は、「ぼっちだったが、今では毎週“夢枕起業ピッチ”に参加し他界コラボも増えた」と語る。SNS上でも「死霊界のワーケーション革命」として話題をさらっている。
コミュニティ形成の加速は、従来の幽界労働観に揺さぶりをかけている。死神省・労務局の審議官で、社会研究を専門とする飛鳥川カゲヨミ氏(没後17年)は「個人主義が色濃かった霊的ワークに連帯感が芽生えた。リモート執行者や遠隔供養師、恨みワークショッパー同士の情報共有の場としても機能し始めている」と評価する。一方、仕事と未練の境界が曖昧になることで“終わらない労働疲労”が蔓延する懸念も指摘された。
今後、虫食いラウンジはいかなる進化を遂げるのか——管理人の炭窪氏は「次は魂供養バイリンガルスペースや、生前未成仏者向けの“ここだけの話”カウンセリング室も検討中」と明かす。あの世のワーカーたちの“二度目の青春”が、未曾有のサブスク・コワーキング文化をさらに熱くしそうだ。



コメント
いつの間にか虫食いラウンジがこんな賑やかな場所になってて驚きました。数十年前はひたすら静かだったのに…今度“怪談プレイバック部”にも顔を出してみようかな。
未練仕事やプロジェクトがここまで盛り上がる霊界時代になるとは。生前は会社にも居場所なかったけど、蘇活サブスクがこんなに人(霊?)を集めるとは思いませんでした。
群れるのが苦手で昔は冷気席でぼーっとしてたけど、最近の積読会とかすごく楽しいです。…とはいえ、終わらない労働疲労って、死後くらいゆっくり休ませてほしいにゃあ。
連帯感?も良いけど、供養も転生も先延ばしでずっと働き続けるってどうなんだろう。いっそ未練放棄派のための“成仏デイ”もラウンジでやってくれたらいいのに。
他界コラボとか“夢枕起業ピッチ”とか、まるで生きてた頃のワクワクをまた感じてしまって懐かしいです。二度目の青春…そういうのも悪くないですね。