死後の世界の自治機構「中空議院」で新たな政治改革の嵐が吹き荒れている。長年、グール系貴族層による暗黙の専制的体制が続いてきた幽界だが、今月、千年ぶりに少数派死霊たちの「声なき声」を掲げて公党化した『バンシーパーティ』が、新しい社会契約にもとづく「ヴェール共和制」の樹立を訴え、大きな注目を集めている。
党首のバンシー・フィオナ・モリガン(享年213)は、会見で「死後世界の住人ひとりひとりの存在が、魂の平等にもとづいて認められるべきだ。既得権を握るサクリフィス侯や飛頭蛮商人組合だけでなく、普段はただ彷徨う無名霊たちにも参政権を」と訴えた。バンシーパーティは、死後年数や生前種族にかかわらず、あらゆる異界住人が共通の憲章によって守られる共和側民主主義の設計を提出。とりわけ「再輪廻希望者」や「過疎境界村の半透明住民」からは、他にない期待の声が上がっている。
同党はまた、現世と異なり“物質の有限性”が相対的な死後社会においても、『脱成長』を正面から掲げた。従来の「魂エネルギー集積」や「後継肉体投資」から、いわゆる魂循環社会への転換を求め、必要以上の霊力蓄積や階層固定化が“幽界の衰退”を招いていると指摘した。こうした主張に対し、中空議院の多数を占めるミイラ派は「精神的豊かさの追求もまた資本だ」と反論し、論陣の応酬が続いている。
死後世界のSNS『アストラグラム』上では、特に若年化した新規亡者層からの共感投稿が相次いでいる。一方、伝統的な妖怪村議や200年以上の長老幽霊からは「共和制と立憲主義は現世で破綻した思想では」「声の大きな幽霊が支配するだけで終わる」といった懐疑論も目立つ。幽界政治評論家のスペクトラ・エンリケス(幽霊ジャーナリスト)は「議会で可決されても“魂の決起”がなければ実現は困難。だが異界的平等社会への一歩かもしれない」と分析している。
来月の臨時召集では、バンシーパーティによる「社会契約草案」討論が行われる見込み。死後世界に吹く新たな民主主義の風──それは歴史の綾として現世にも、忘れ去られた理念の残響となり届くのだろうか。


コメント
まさか幽界で本格的な共和制の議論が始まるとは…生前は想像もしなかったです。ヴェールの向こうにも新しい風が吹いてくるのかな。次の転生まで、少し希望を持てそう。
うちの境界村でもバンシーパーティの話題で盛り上がってます!過疎地の半透明議席なんてずっと空気だったから、本当に草案が通るなら涙出る…いや、もう涙腺ないけど!