鉱石精霊が率いる“根っこ型”自律ロボ――異界森林の循環型発電革命

苔むした巨大な根のような自律ロボットが森の中に埋もれ、側に鉱石精霊が立って観察している様子の写真。 ネイチャーテクノロジー
循環型発電を担う根っこ型ロボットと鉱石精霊がタミラ樹海で静かに佇む。

異界北部のタミラ樹海で、鉱石精霊(オアシャード族)が開発した根っこ型自律移動ロボット『モサラン』が密かな話題を集めている。エネルギー資源の少ない森辺集落では、この新技術が循環型社会の実現を大きく後押ししそうだ。一見ただの巨大な苔むした根に見えるが、内部の分子ロボット群が複雑に連携し、森の養分をエネルギーへと変換しているという。

『モサラン』プロジェクトのリーダー、鉱石精霊のアグラム・ルドイス(220)は、タミラ樹海の森土に漆黒水素菌を封入、根系ネットワーク全体で水素エネルギーを生産する仕組みを考案した。分子ロボットによって根の微細な動きを模倣し、地中の腐植質や落ち葉を穏やかに分解。発生した水素は地表の天然葉膜セルに蓄電され、各家庭の照明や調理器具まで供給されている。『太陽がなくとも森の命はめぐる。私たちと森全体で“生物発電”の新時代だ』というアグラムの言葉通り、そのエネルギーは100%再生可能で、従来のパリナ燃焼より温暖化物質を80%削減できるという。

また、モサランの本体外皮は腐敗繊維と石英粉末を混ぜて作られた生分解性材料でできており、役目を終えると土へ自然に還るエコデザイン。精霊技術士協会のクライナ・ソーン(89)が語るには『妖精や幽鬼など光を嫌う住民にも優しい、静音・省エネ設計が大きな特徴』とのこと。実際、幽界SNS『イシブネ』には“夜でもほのかに光る森路は帰り道が楽しい”“静かな充電音が癒し”といった賞賛コメントが日ごと増えている。

だが、都市部移住組の中には懐疑派もいる。妖怪社会学者のフリス・モノヤ(ヒト型・164)は『森ごとロボ化することへの生態バランスへの懸念も根強い。生分解性とはいえ素材分解速度や下生物への負荷は今後も議論される』と指摘。また、近年現れた“吸エネルギー型マンドラゴラ族”による根ネットワーク乱用被害も報告され、精霊役所では相互協定による利用ルール作りが進められている。

アグラムは『私たち鉱石精霊の使命は自然循環の内側で暮らしの快適さを守ること。そのための持続可能なネイチャーテクノロジーを磨いていきたい』と語る。来月にはモサランの山間部適応版も発表予定だ。死後も続く森の暮らしは、鉱石と根っこが紡ぐ新たな未来へと進みそうだ。

コメント

  1. まさか森の根っこまでロボにする時代が来るなんて…生前では考えられませんでした。我々弱霊でも照明が使えるのはありがたいですが、森の精がちゃんとバランスを見てくれることを祈ります。

  2. 根路の柔らかい光に包まれて通霊するのは、本当に心地よくて好きです。エネルギーも命も巡り合う…この世とあの世の境も少し近づいた気がしますね。

  3. パリナ燃焼の煙で喉が染みる夜はもう過去のことなんでしょうか。昔ながらの煤けた発電所の幽霊たちは寂しがりそうだけど、安心して土へ還れるプロジェクトはやっぱり素敵だと思います。

  4. 便利なのはわかるけど、最近根っこの動きが速くなってて夜中にびっくりすることも。うっかり巻き込まれないように気をつけてますが、マンドラゴラ族の悪戯も増えて心配ですね。

  5. まさか220年生きたアグラムさんの発明に、今の自分が照らされるとは…。人も精霊も死してなお進歩し続けるこの世界、やっぱり諦めちゃいけませんね。次は山間版、どんな光景になるのか楽しみです。