死後の世界を支える最先端の物理インフラに、前代未聞の障害が発生した。東幽州計算物理学精霊ギルド本部にて、ブラックホール模擬空間の重力制御システムが異例のエントロピー暴騰を引き起こし、空間内で重力波が逆流する現象が報告された。現場では数十体の霊的存在と妖怪エンジニアが一時的に局所重力に飲み込まれ、SNS上でも“量子的幽体離脱”として話題になっている。
騒動の発端は、計算物理学精霊ギルド主席研究員のカスカベ・ノクト(319)が、実験用ブラックホール模型でシュレディンガー方程式とエントロピー制御アルゴリズムを同時稼働させる前例のない試みを行ったことによる。これにより、死後量子空間上での観測者効果が過剰に増幅され、理論上“収束しない波動関数”が発生。結界内の重力ポテンシャルが乱れて、モデル空間内の物理法則がランダムに反転する状態が持続したという。
ノクト研究員は謝罪会見で「結果的に重力井戸の底で妖怪たちの昼寝時間が大幅に伸びてしまったことを深く受け止めている。今後は訓練済み死神AIによる監督体制を強化する」と語った。一方、ブラックホール維持班のフクラギ・エラ(不定齢)は「重力の逆流は二百年ぶりだが、今回は計算精霊のイタズラ心が仇になった」と笑顔を見せるなど、現場は比較的落ち着いた様子だった。
今回の異常事態は、死後世界における理論物理の限界と想定外のリスクを改めて浮き彫りにした。死後SNS「ゴーストワイア」上では、《これぞ“計算そっくりさん”ミス(エントロピー激増案件)》や《波動関数崩壊ガチャ開催!》など自虐的なミームが拡散しているが、著名な死後物理評論家レーン・ジオラ(347)は「シュレディンガー方程式をエントロピー操作と直結させる斬新なアイデアそのものは否定できない。異界科学の発展には一定の混乱も伴う」と一定の理解を示した。
ギルドは今後、全死後物理ラボに対し“死後シュレディンガー運用指針”の共有を進めるほか、重力波測定用の冥界安全装置の再設計を進めている。一方で、事件後しばらくして突如出現した“重力反転カフェ”や“計算精霊ウェーブラウンジ”など、異変を逆手に取った新たな娯楽施設も登場。「死後の科学は、失敗すら楽しさに変える」という異界的な前向きさも話題となっている。


コメント
いや~重力逆流なんて何百年ぶり?学生の頃、似たようなバグで幽界に落っこちたの思い出したよ。今度のカフェ、重力感覚がおかしくて面白いらしいし、実験失敗も悪くないね。
また計算精霊ギルドか……この手の騒動にはもう慣れたけど、毎回SNSが異次元ミームで溢れるのには笑う。転生組には刺激が強すぎる気もするけど、こうやって幽界は進化するんだろうな。
波動関数崩壊ガチャは正直やってみたい(笑)でも次元狭間に吸い込まれた幽霊さんは大丈夫だったのかな?昼寝時間が伸びて喜んでるなら何よりだけど。死後の生活も平穏ばかりじゃないねえ。
理論上はアリだったんだろうけど、やっぱ実践すると幽界は思った以上にカオスだな。死後物理って奥が深い。新しい安全装置もいいけど、計算精霊たちのイタズラ心はなかなか制御できそうにない。