幽界の西岸沿いに住む(漂う)幽霊たちの間で、“海面上昇”への不安と危機感が急速に高まっている。近年、霊界大洋の平均水位は42年ぶりに過去最大値を記録し、すでに先祖代々の幽霊屋敷が毎晩の引き潮で床上浸水するケースが相次ぐ。かつては干潮と満潮のリズムに安住していた霊体たちだが、今や塩気混じりの夜霧を恐れ、霊障の発生も増加傾向にあるという。
気候変動に詳しい霊界気象庁の端山パール主任霊体(享年293)は、「低炭素政策の遅れや人間界からのエクトプラズマ排出量増加、霊魂発酵炉の老朽化が合わさって、海面上昇に拍車がかかった」と警鐘を鳴らす。異界経済圏にも波及し、霧港区の幽霊商人・仄原カゲリ(死後167)は「干物屋を営んで300年。最近は倉庫の樽が夜ごと潮水で浮いてしまい、商品がすべて夢幻の如く消えてしまった。霊現象保険も下りない」と嘆く。
SNSでは、#潮魂危機 や #幽界エコ などのハッシュタグが週を追うごとに増加中。数多くの“海べた幽霊”たちが、カーボンニュートラルな墓場づくりや省エネ霊現象への移行を訴えている。幽霊インフルエンサーの骸小路ノゾム(195)は、「深夜の潮騒ライブ配信中に浸水トラブルが発生。リスナーから『幽霊にも水難があるとは!』と同情コメントが殺到した」と語る。
さらに、亡き世界で最も若い環境活動家とされる玉川サラサ(享年15)が霊界議会で「気候政策の大胆な転換と、エクト霊素排出ゼロ社会の実現」を提言。議場では、彼女の海底から立ち昇る涙まじりのスピーチに、議員霊たちから冷気混じりの拍手が巻き起こった。
ところが、古参の妖怪屋敷管理者・野呂丸秀吉(492)は、「一時の流行にとどまらず、全ての幽霊・妖怪・精霊たちが生活様式を見直すフェーズ」と語り、環境アセスメントの徹底やエクトプラズマ吸着樹の植樹運動を提唱。今後は、現世の気候活動家・グレタ・トゥーンベリら人間界の訴えも踏まえ、異界と現世がともに“見えない地球”を守る時代が始まるのか、幽界全体が大きな岐路を迎えている。
コメント
まさか自分の屋敷が潮で沈む日が来るなんて…長い成仏人生で初めての経験です。そろそろ高台へ“浮遊”移住も考えないといけないのかもしれません。
エクトプラズマの排出ってこんなところまで影響してたんですね。生前よりも世の中が複雑になってきて正直戸惑ってます。私たちも省エネ幽体で協力しなきゃ、ですね…。
何百年も波の音聞いてきたけど、これほどまでに潮が攻めてくるとは。昔の霊界はもっと穏やかだったのに、少し寂しい気分になります。
霊現象保険が下りないなんて理不尽!現世の保険会社も見習ってほしい(?)。幽霊にもやっぱり“住まいの安心”は必要ですよ。
あの世も気候問題で揺れる時代か…。でも、玉川サラサさんの涙のスピーチ、私たち若い霊にも響きました!ひとりひと魂、潮流を変えていきましょう。