各地の死後の世界で進むソーラーパネル設置計画が、森林生態系に深刻な影響を及ぼしている——。とくに山形県の幽霊の森では、数百枚単位の妖怪製ソーラーパネルがこの数ヶ月で設置され、森の主である樹木霊や狸妖怪らが連日抗議活動を展開している。だが電力安定供給のために推進されてきたソーラー化は、今や生態系の歪みを招いていると住民霊らのあいだで波紋を呼んでいる。
今回問題になっているのは、森の中央部に広げられた幽質ソーラーパネル群の影響だ。樹木霊の代表であるシラキ・ノト(森林保護連盟会長・三百五歳)は「昼夜問わず木漏れ日が消え、コケ妖精や樹液小鬼らが日照不足で次々と姿を消している」と、涙ながらに語る。また、パネルの設置跡地では森林の根系ネットワークが寸断され、年若い精霊たちが『電力化=近代化』の陰で消滅しかけているという。
生態系の変調は、食物連鎖の下位階層にも及び始めている。主として夜間に働く小型の魂魚(たまうお)たちは、川辺の木立下で行っていた精霊花の受粉作業に必要な微光を失い、繁殖数が激減。これを食糧源としていた中型妖怪サカサノミアも数を減らし、近隣の妖怪漁業組合による魂魚乱獲(オーバーフィッシング)事件も発生している。
自然保護区管理局局長のヤマネ・カゲロウ(精霊生態学者・二五二歳)は、「妖怪たちがエネルギー自給の象徴として進めたはずのソーラーパネルが、逆に森の自浄作用や水資源循環に予期せぬ影響を出している」と説明する。実際、森を通る幽界河川の水位はここ1年で平均3センチ低下しており、魂水の循環不全が指摘されている。局の対策班は、太陽光を等分できる反射妖怪の導入や、パネル設置地域を限定するゾーニング案を検討中だ。
SNS上では、植林活動を通して森の再生を呼びかける動きも活発化している。霊界若手団体『森友たまくらぶ』代表のユズリハ・マコト(21)は、「都市化とエネルギー効率の議論だけでなく、異界本来の生態系の調和を大切にしたい」と投稿。この意見には古参の妖怪からも支持が集まる一方、「古い森の価値感だけで反対されては成長もままならない」とする新興魂企業のコメントもみられるなど、問題は世代と価値観をまたぐ形で拡大している。
なお、森林地帯の端では、昼夜を問わず小さな影が苗木に話しかけたり、パネルの間に自生した草花が微笑んでいるとの目撃情報も絶えない。森の未来はどこに向かうのか、異界の住民全体が注視している状況だ。
コメント
日照不足でコケ妖精が減るなんて、本当に寂しいニュースです…。私もかつて森の影で遊んだ記憶が蘇りました。この調和が崩れるのは、やっぱり悲しいですね。
森の生態系って思ったより繊細なんだなあ。ソーラーパネルが幽界の水循環にも影響なんて知らなかったよ。うちらも転生先の環境、もう少し気にしないとな。
魂魚が減ると漁業組合も大変そうだな。成仏バザーで魂魚干しを買うのが楽しみだったから、オーバーフィッシングのニュースは驚いた。でも、反射妖怪の導入って発想はさすが幽界っぽい!
また『成長のため』って便利な言葉で、古いものを壊そうとしてるだけじゃ?異界の時間は長いんだから、急がず森と共に生きていけるはず。現世の失敗も見てきたし…同じ過ち繰り返したくないなあ。
パネルの間に話しかける影や微笑む草花の話、ちょっと希望が残るね。森の未来、みんなで見守れたら良いな。次の転生も緑いっぱいの森がいいなと思いました。