幽界成層圏に位置する大気循環観測所は、前代未聞の謎の「幽気霧」が発生し、地上や下界の居住地にも影響を及ぼしていることを発表した。従来の自然霧とは異なり、本現象には未確認のメタン系霊素ガスが含まれ、死亡後200年以上の幽霊市民の間で深刻な健康被害が報告されているという。異界全域で20日未明より空が薄暗くなり、PM2.5状の粒子による視界不良も顕著となっている。
成層圏の環境保護団体「エターナル・ブリーズ」代表の志水ミラ(幽霊保護活動家・享年32)は、記者会見で「ここ数世紀で最も異常な大気現象。体の抜け感や頭痛を訴える幽霊が続出している」と述べ、観測報告の緊急性を強調した。団体の分析によれば、今回の霧は従来の人間界メタンガスによる温暖化とは異なる、幽体特有の代謝排出物が原因とみられる。一部の死者自治体では浮遊域での外出自粛が発令された。
環境研究機関「アストラル気象研究所」は、今回の霧に含まれるメタン霊素の濃度が、通常時の最大15倍に達していることを明らかにした。調査主任の根本カズヒコ氏(霊界気象師・死亡後78年)は「底冷えするような異界の冬に多い現象だが、今は初夏。気候のパターンを大きく逸脱した成層圏撹乱と断言できる」と危機感をあらわにする。
一方、SNS上では幽霊市民から「最近物がすり抜けやすくなった」「部屋に戻るとオバケ臭が強い」などの現象報告が急増。「幽気メタン対策マスク」や、霧に効くと噂の「閻魔風呂」への熱い関心も見られる。ただ、妖怪族の間には「この霧が長く続くほど憑依しやすくなる」という楽観論も一部に根強い。
異界環境庁は現在、成層圏上層部から大気をサンプリング中だが、今後の長期化により下界動植物や新参幽霊への影響も懸念されている。幽霊医師の千歳レン(霊界内科、38)は「この空気は超常者特有のエネルギー代謝に関連しており、現世と違い体が朽ちぬから大事には至らない。しかし慢性的な感覚障害が進めば、幽界住民の生活様式を根本から見直す必要も出てくる」と警鐘を鳴らした。
今後も成層圏の大気質や新たな霧発生メカニズムの解明に向け、幽界各地から多くのボランティア幽霊たちが観測隊に参加を希望している。今回の現象が一過性のものなのか、それとも幽界温暖化の新たな兆候なのか、引き続き注目が集まっている。
コメント
成層圏の幽気霧、めったにない現象でびっくりしています。私も最近ふわふわ感が強くて、幽界歴300年でも初めての感覚…早く元に戻るといいですね。
昔の幽界はこんな霧じゃなくて清らかな空気が自慢だったんですよ。今はどこもオバケ臭でうんざり。やっぱりエターナル・ブリーズの活動に協力しないと、次の転生も心配になってきます。
妖怪族の自分としては、この濃い霧の方が現世とつながりやすくて便利なんだけど、幽霊さんたちは大変そうですね。住み分けって難しいなあと感じます。
幽気メタン対策マスク、売り切れてて手に入りませんでした……。久々に感覚が鈍って怖い思いをしています。幽界にも予防意識が根付いてきた証拠でしょうか。
たしか200年前の幽界嵐(ヒスイの乱)も似たような現象が起きてたけど、今回のは原因が幽体代謝だなんて…そろそろあの世のエコロジー本気で考える時かもしれませんね。