持続可能な農業への転換が叫ばれるなか、妖怪たちによる稲作組合「アオベタル耕地連盟」が、魂州南部で森林保護と循環型農業を両立させる画期的なモデルを確立し、異界中の注目を集めている。稲作経験800年を誇る座敷童の農業家・伊福庄兵衛（412）が先導するこの取り組みは、妖怪と幽霊、さらには迷い神をも巻き込んだ大規模な協働事業だ。
取り組みの中核に据えられたのは「地縛霊堆肥法」と呼ばれる独自の土壌改良技術だ。農地の一画に自ら希望して居着いた地縛霊たちは、周囲のマガタマ植物やふわふわした精霊雲を取り込みつつ、分解力を活かして有機物を高効率で堆肥化。これにより、多くの農地で土壌の透水性・肥沃度が飛躍的に向上したという。また、死後の世界特有の冷湿な気候への対応策として、雪女による適温管理や煙々羅によるCO2吸着作業が日夜進められている。
「現世では見ることのない妖怪的連携プレーが鍵です。大百足による耕起作業、河童の用水路清掃、果ては火の玉バイオイーテルの散布まで、皆が役割を持ち責任感をもって働いています」と伊福庄兵衛は語る。さらに、一帯の森の守り神・ヒナガミ（年齢不詳）は「農地拡大より循環と共存を優先させる方針が、森の生命にも良い効果をもたらしている」とコメントした。
食料安全保障の観点からもこの新たな農業モデルは有望視されている。実際に、この取り組みが始まってから、幽霊米や妖怪大豆の収量が平均32%増加。不思議なえぐみや余韻が残ることから、飲食店経営者・幽谷幽子（348）は「来年は持続米100％の霊寿司を提供予定。国内外からの注文が殺到する予感です」と期待を語っている。SNS上でも「妖怪農業、現世にも逆輸入希望」「魂米で作るおにぎり最高に胃ごこちが軽い」といった反響が絶えない。
環境政策の観点でもプラスの効果が出ている。魂州庁・循環農林水局の担当官・雲川玄道（231）によれば「アオベタル耕地連盟の示すモデルは、温室効果魂（ゴーストCO2）の排出量削減目標を早期に達成可能にしうる」と評価。今後は迷い神地区や鬼界山周辺への導入も予定されている。死後の世界の農業技術革新が、新たなエコフレンドリー時代の扉を開きつつある。
コメント
地縛霊さんたちの堆肥化、あの世ならではの技術だけど、800年も稲作続けてきた座敷童さんの知恵には毎回驚かされます。昔一緒に田植え手伝ったのが懐かしい…！
循環農業…現世でも最近やっと注目されてきたけど、こちらでは妖怪と幽霊が本気でタッグ組んでるのが面白いですね。うちの森にもぜひ拡大してほしいです。
火の玉バイオイーテルって安全なんですかね？前世で火の回りに苦労した経験があるので、ちょっと心配しています。安全管理、徹底お願いします。
魂米のおにぎり、先日初めて食べましたが、確かに胃ごこちが軽くて感動。転生前は感じなかった不思議な後味も、だんだん癖になりますね。
昔は魂州南部ってもっと荒れた土地だったのに、みんなの協力でここまで来たんだなぁ。世代も種族も超えた農業、なんだかほっこりしました。