異界の里山、夜霞郷にて、絶滅危惧種リスト(レッドリスト)入りしていた青光コケが突如繁茂し、保全活動の現場で“小さな奇跡”が報告された。「こどもレンジャー隊」による自然再生活動に加え、長年人間社会から姿を消していた隠れ狐族との前例なき協働が注目を集めている。
夜霞郷保護区管理局の精霊職員・根岸柳生氏(392)は、「今年に入り、レンジャー候補の幽霊児童たちが日々植栽や伐採、湿地帯の青光コケの回収活動に励んできた。その中、週末ごとに忽然と新芽の列が現れるなど、人為的には説明のつかない植生回復が続出し始めた」ことを明かした。調査の末、現場に落ちていた金色の毛と小皿痕から、長らく現れなかった隠れ狐族、特に幼狐たちが夜間に密かに土地を耕し、腐葉土を配っていたことが判明した。
子どもレンジャー隊の隊長である幽霊少女・八世みずほ(享年12)は、「うちの班は夜回り中によく土がふかふかになる音を聞いたり、舞い上がるリスたちの影を見ていた。お供えの豆を忘れた次の日、コケの新芽がなぜか全部なくなったことも」と語る。狐族は昔より人間の里山と共生してきたと伝わるが、異界でもその“縁”は生きていた。
環境再生のカギとなったのは、狐族が代々用いてきた幻影腐葉土によるブルーカーボン(生態系由来の炭素吸収)の促進効果だった。専門家である山根竜樹幽霊博士(元農大准教授、享年55)は、「この腐葉土は死者界の微生物と狐の魔力が混じるため、わずか一夜で植生回復と土壌改良を同時に進める“異界唯一の生態技術”です」と解説する。これにより、青光コケや小さな妖精たちの巣も急激に復活、地元の精霊動物の共存環境も一変したという。
SNS「幽界帳」では《狐さんたちありがとう》《こどもレンジャーのがんばりに拍手》《蘇ったコケに小鬼もびっくり》などの声が続々と投稿されている。一方、保護活動の持続には新たな課題も残る。隠れ狐族は警戒心が強く、里山の消費活動が過度になれば再び姿を消しかねない。根岸柳生氏は「地域の死者・妖怪・精霊たちが、伝統への敬意と最新の異界保全科学を重ねていくことが、次代への資本となる」と呼びかけている。
今後、夜霞郷の里山自然再生活動は、死者界のレッドリスト更新や仮想林間学校の教材化も検討されており、人間界にも応用可能な“異例の協働モデル”として研究が進む。こどもレンジャーと狐族が紡ぐ新たな物語に、界境を越えた注目が高まっている。
コメント
小さなレンジャーたちと隠れ狐族の協力、なんだか百年前の里山を思い出して胸があつくなったよ。幻影腐葉土、現世にもあればいいのに。
青光コケがこんなに急に蘇るなんて…狐族の魔力はやっぱりすごい!私の旧友も昔狐だったけど、きっと今ごろ草木と踊ってるね。
こどもレンジャーの子たち、毎晩成仏も忘れて里山パトロールしてたの!?こっちは仕事終わらず輪廻送りばかりだよ。若い子たち、がんばってるなあ。
狐さんたち、かつては人間嫌ってたはずだけど、異界ではまた違う縁が生まれるのね。消えた新芽の謎も可愛らしい。お供え物、もっと用意しなくちゃ。
異界でもレッドリストとか更新されるとは…成仏しても仕事からは逃げられない。狐族さん、次はわれわれ幽鬼にも土壌改良の秘訣、少し分けてほしいな。