星野橋霊界森林区に位置する夜間植物園「フィタライツ・ガーデンズ」で、ここ数週間、死後生を得た多肉植物が爆発的に繁殖し始めている。葉の一部が自律的に脱落したのち、その場で幽霊状の苗を発芽させる光景が目撃され、園内は妖怪園芸家や霊的プラントユーチューバーたちの間で大きな話題となっている。科学霊術士らは「異界型光合成の進化」と指摘し、SNSでは“夜の葉っぱが踊り出す動画”が拡散中だ。
異変が初めて確認されたのは、夜間のみ開花するというチュリラ属多肉植物エスペリドナムの温室だ。植物園副園長の冥土久美子(めいど・くみこ、225歳)は「本来の多肉は枯れた葉が静かに土に還るだけなのに、今季は落葉直後にモヤのような光る苗が浮上し、2分以内に定着する現象が頻発している」と証言する。発芽した苗は半透明で、形状が成長のたびに変化し、夜明けとともに姿を消す個体も多いという。
園内のこの“亡霊多肉”現象を巡り、アーバンファーミングの専門家や妖怪植物療法士らの研究会が急遽組織された。妖精園芸ユーチューバーの水無月玲葉(れいは、享年32)は現地から生配信し、「葉から生まれる苗自身も何かを訴えているよう。発芽の瞬間に奇妙な葉鳴りや微かな声がする」と語る。サブチャンネルでは、種子の出現パターンや、偶発的に人魂状の発光を伴う葉の様子がファンの興味を引き、夜間帯の視聴数は過去最高記録を更新した。
一方、精霊国立アカデミー植物身体研究科の根ノ上ミドリ准教授(無期霊)は「光合成の過程で、通常ではあり得ない“霊素”の吸収分岐が起きている可能性がある」と分析。「この園の地下には旧時代の交信用幽根石が眠っているため、それが次元粒子の流れと共鳴し、植物の再生コードを書き換えたのでは」と推測する。
園内では、異界型多肉苗の安全性を巡る意見も分かれている。在界滞在者の間では「うっかり亡霊多肉を持ち帰ったら、自室の鉢からも幽霊の苗が出てきた」「夜毎に葉が増え続ける」といった報告が絶えない。流通拡大を求める声もある一方、「無断持ち出しは禁止。観察は園内に限るべき」と警備員の死神久遠(くおん、終齢不詳)は警鐘を鳴らす。植物園では今後、発芽現象の記録展示や、園内限定の“幽葉タッチ体験”イベントを開催予定としている。



コメント
去年は幽界蕾の開花で驚いたばかりだったのに、今度は亡霊多肉!うちにも一株ほしいけど、夜な夜な勝手に葉が増えるのはちょっと怖いかも…現世の観葉植物とはひと味違うね。
また植物園が何かやらかしたのかと思ったら、次元粒子の流れが関係してるなんて本格的すぎ。地上の住人たちには絶対理解できないだろうな〜。夜の動画見たけど、あの葉鳴りは懐かしい気持ちになったよ。
こういうニュースを見ると、転生前に人間だった頃の常識が通用しないって痛感するよ。持ち帰りたい気持ちは分かるけど、知らずに家中が苗だらけになるかもなので注意したほうが良さそう。
夜間の発芽現象…私たち夢渡りの者にとってはよくある話だけど、光る苗が勝手に浮くのはさすがに未体験ゾーン。幽葉タッチ体験、行ってみたいな。園芸ユーチューバーたちの浮かれっぷりが微笑ましい。
そもそも幽根石を放置してたのが諸悪の根源では?昔からこの手の再生異変はあったけど、どこまで進化するのか興味深い。加減を知らない植物は異界でも要警戒だよ。