炎の精霊山で霊界“山火事”頻発—憑火団と国連気候委の対立激化

夜の霧に包まれた異世界の山で、憑火団の妖怪消防士と精霊たちが青白く燃える幽火に立ち向かう様子。 気候変動
炎の精霊山では憑火団と精霊たちが前例のない幽火災と戦っている。

死後の世界有数の観光地・炎の精霊山で、この世では前例のない“山火事騒動”が再燃している。燃えるはずのない霊体の木々や、幽体の草花が次々と発火するという異常事態に、地元憑火団と国連気候変動枠組条約(異界分会)との間で激しい責任論争が繰り広げられている。異常気象の影響のほか、最近急増する呪われたスマートグリッド設備による“幽熱暴走”も原因とされ、炎の精霊や妖怪たちの怒号が飛び交う現場を取材した。

炎の精霊山の頂き近く、“炎の祭壇”を守るリーダー格の精霊、モキリ・カエン(精霊・47)は「ここ100年で見たこともない規模の火災が相次いでいる」と語る。山域では本来、霊界の木々は物理的火災の影響を受けない。しかし、8月末の“透明炎”山火事では100万体を超える幽霊鳥が巣を失い、1000年続いた精霊の薪小屋も焼失した。カエンは「今年から導入されたスマートグリッド塔から奇妙な幽熱波が広がっている」と困惑する。

問題のスマートグリッド設備は、人間界の技術を魔界風にアレンジした「共鳴型エネルギー網」と呼ばれ、分散型の魔力発電と再霊化システムを接続している。導入により山域の精霊家庭では霊力の効率的な配分が期待されていたが、予期せぬ“魔力転送ノイズ”が周囲の霊気温度を異常上昇させ、幽体植物の自発発火を招いているとの指摘が相次ぐ。国連気候変動枠組条約異界分会のタルモ・ヤマビコ広報官(幽霊・39)は「異常気象による幽燃現象の複合的な発生であり、グリッドの運用方法そのものの見直しが必要」との見解を示した。

また、山中では古来から存在する“憑火団”と呼ばれる妖怪消防士たちが独自の消火儀式を行ってきたが、最新の山火事ではその古式魔術が効力を失った例が報告されている。憑火団長のヌリシロ・スズリ(妖怪・120)は「魔力ネットワーク障害で伝統の“霊水”が干上がり、消火隊員も霊体熱傷を負った」と語気を強める。SNS上では「人界の技術を無理に導入した報いだ」「幽霊は火に強いってウソだったのか?」などの投稿が相次ぎ、異界住民の不安を煽っている。

この事態を受け、国連異界気候委は緊急の合同会議を招集したが、憑火団と精霊側は「原因究明・再発防止の前に、被害地域への十分な暗黒霊保護資金の拠出を」と強硬に要求。会議は物理・魔力両面からのグリッド見直しに加え、伝統消防儀式の現代化と山域生態系(幽体昆虫や幽霊鳥)の保護策を含む包括的提案の協議へと難航している。未だ炎の精霊山では、次の“幽燃警報”が発令されぬかと、現地の魂たちは凍てつく不安の中で夜を明かしている。

コメント

  1. 1000年続いた精霊の薪小屋が焼けたって聞いて、本当に心が痛みます…あの場所で何度も転生祝いを開いてもらったのに。幽熱暴走も怖いですね。昔ながらの霊水儀式、いつか復活してほしい。

  2. あ~やっぱり人界の新しモノに頼りすぎると、こうなりますよね…。霊体だからって油断しちゃいけないし、異界だって気候変動が深刻なんだなと改めて実感しました。みなさんご無事を。

  3. 幽霊鳥の群れが巣を失ったって…切なくなります。私も幽界で迷子になったとき、あの山の鳥たちに助けられたことがあって。どうか早く安全な棲み家が戻りますように。

  4. どうせまた会議ばかりで何も変わらないんじゃないですかね。暗黒霊保護資金もどこに消えてるんだか(笑)。どっちにしても、幽燃警報が常態化したら山域の観光業は成仏しちゃいそう。

  5. 透明炎って、昔は伝説だったのに今や日常に…異界も本当に変わったなぁ。不謹慎だけど、火の精霊たちの怒号を一度聴いてみたい気もします。でも、被害に遭った皆さまに安らぎが訪れますように。