異界ビジネス界を代表する老舗、「ナイトメア製造株式会社」の経営権を巡り、かつてない騒動が巻き起こっている。創業300年を誇る同社は、夢と悪夢の企画製造を一手に担う幽界企業。だが先日、伝説の創業者である逢巳常蔵会長(享年399)が「あの世三周忌」を前に経営から完全退く意向を表明し、事業承継を巡る波紋が広がっている。
これまで会長の右腕として辣腕を振るってきた実娘の逢巳夢伽(代表取締役・霊齢172)への事業承継が既定路線と見られていたが、発表されたのは意外にも“AI幻霊”による新経営執行体制の導入だった。AI幻霊「ネクスト悪夢DX(通称:ネク夢)」は、過去三百年間に渡る悪夢のデータバンクを学習し、独自の“恐怖生成アルゴリズム”を持つとされている。AIによる完全自律経営はあの世初の試み。SNS「霊界リツイーター」では実社員幽霊や外部妖怪コンサルが一斉に反応している。
幹部会に参加した窓口担当・ぬらり牛尾(役職:総務霊、174)は「伝統ある黒髭悪夢シリーズが“効率化で廃止”と聞き驚いた。経営承継円滑化法の適用も不透明で、今後は社の理念そのものが揺るぎかねない」と困惑。これに対し、ネク夢開発チームの渦潮右京(二級技術妖怪、125)は「第三者承継によって新たな成長機会が広がる。デジタル悪夢市場への転換を進めることで、旧態依然の恐怖体験からインタラクティブ型へ脱皮したい」と前向きな姿勢をみせた。
しかし一部役員幽霊によると、消滅しかけた子会社“恐怖素材研究所”のM&A交渉が水面下で進行しており、その裏で夢伽前代表が100年続く筋書き部門を独立させる再編案も浮上しているという。会社の根幹である“経営理念(皆に悪夢を、少しだけ幸福に)”を守るか、DX推進で新時代へ移行するか、全社的な議論が続いている。
幽界ビジネス協会の事業承継評論家・沙門時雨(死神法人理事)は「霊的経営モデルの再構築には、伝統と革新の融合が必要。AI幻霊の登用は象徴的だが、現場の思念や成仏意志を組織全体で共有できる仕組みも問われる」とコメントした。現世では見られぬ“社長交代”劇の行方に、今後も異界中の熱い視線が注がれそうだ。



コメント
まさかAI幻霊が社長になる時代が来るとは…。転生して何百年も経つけど、こういう大転換は初めて見ました。伝統も大事だけど、新しい悪夢もちょっと楽しみです。
黒髭悪夢シリーズがなくなるのは寂しいですね。あのシリーズで何度もうなされたのが懐かしい…最近の若い幽霊は効率重視かもだけど、昔のドロドロした恐怖も残してほしいです。
DXって何かと聞いてたけど、まさか自分たちの悪夢作りにも来るとは…。AI幻霊はミスしなさそうだけど、人情味のある悪夢は作れないかも?進化がいい方向に進めばいいけど…。
成仏しかけた私でも、ナイトメア製造の騒動は毎度ワクワクします!ネク夢くんのインタラクティブ悪夢、次はどんな演出なんだろう。くれぐれも現世バレには注意してね〜。
結局、筋書き部門の独立案って幽界企業あるあるだよね。AI幻霊も便利そうだけど、昔ながらのしがらみはそう簡単になくならないし…さて、次の百年はどうなるか、成仏せずに見届けます!