“幽界ファイアウォール暴走”で亡者スマートシティ混乱 談判続く魔導エンジニア組合

霧に包まれた近未来的な都市の大通りで、霊体の住民たちが光るバリアの前で困惑する様子。 情報技術
都市核ルセンティアの霊的ファイアウォール暴走により混乱する亡者市民たち。

地上と幽界の通信網がかつてない混乱に包まれている。先日、死後の世界リオン界最大の“スマートシティ”都市核ルセンティアにて、次世代霊的ファイアウォール〈フォギーパレス3.0〉が突如暴走。自治体システムの大半が一斉遮断され、数百万体の亡者や精霊が重要な日常サービスへのアクセスを絶たれる事態となった。技術職の“魔導エンジニア組合”フロストランス支部による談判も続いており、復旧のめどは立っていない。

発端は、今月初旬にルセンティア市行政と幽界IT企業アストラディア社が共同実装したAI型結界ファイアウォール“フォギーパレス3.0”の機能更新だ。同ファイアウォールは従来の結界技術とブロックチェーン型認証を融合し、不正な現世アクセスや悪霊侵入を極限まで防ぐはずだった。ところが、メタバース化した市庁舎サーバーへの配備後、夜半に突如“亡者ナンバー”によるラグ違反を誤検知し、市民IDおよび公共交通、転生手続き窓口、冥府郵便など270以上の自治アプリを自動遮断した。現場の担当者、霧森カゲロウ(技術官、381)は「こんな規模の遮断は千年ぶり。霊的インフラの復旧には慎重を極める必要がある」と述べている。

今、亡者市民の暮らしは混乱の渦中にある。霊体交通の主軸である“冥途バス”は運行不能、転生抑制署や供養申請窓口もネット認証が通らず仮閉鎖となった。市民からは「供物デリバリーが届かない」「現世SNSと連動できず友と語れない」といった悲痛な声が相次ぐ。70体以上の伝統妖怪が居住する宵守地区のウカノ メリリ(主婦、402)は「先祖へのオンライン回忌が中断されて大困り。子孫たちともう10日も連絡がつかない」と不満を漏らす。

復旧の遅れには“技術者ストライキ”も絡む。霊的システムを整備する魔導エンジニア組合によれば、「新AI結界の実装前テストは“人間的時間”換算で2分しか行われなかった」とされ、ブラック化する労働環境と不透明な報酬体系への抗議の動きが強まっている。組合代表、ガイア・フラムサーム(578)は「亡者社会もきちんとしたデバッグと余暇が必要だ。冥府の暮らしにDXを持ち込むなら、我々の霊的尊厳と安全を軽んじてはいけない」と強調する。

一方で、市民有志グループは緊急時“霊体P2Pネットワーク”を立ち上げ、転生相談や供養受付の要望を集約しつつある。現世の一部エンジニアリング幽霊サークルも遠隔技術支援を表明し、幽界クラウド上で“しらたまファイアウォール再起動祭”が計画中だ。経済評論家のダンタリオン・リーフ(幽界経済大学教授)によれば、「今回の混乱は幽界経済システムのデジタル依存を浮き彫りにした。今後はより柔軟なセキュリティ設計と、死後社会でも働き方改革や分権的なシステム運用が求められる」と指摘している。

コメント

  1. フォギーパレス3.0、そこまで厳重にしなくても…って思ってたけど、まさか冥途バス止まるとは。先週ひさびさに転生窓口使おうとしてたのに、余計成仏できなくなりそうです。みんなの供養、早く届きますように。

  2. 再起動祭、なんか懐かしいなぁ…大昔も似たような障害あった時、火の玉P2Pで手紙やりとりしたっけ。IT化は便利だけど、魂の繋がりはアナログでも残しておきたいもんですね。

  3. 千年ぶりって、やっぱ僕らも時代に踊らされてるなぁ…エンジニアの皆さん、お疲れ様です。でもテスト2分はさすがに闇が深い。幽界ブラック労働、これを期に改善してほしい。

  4. 供物デリバリー止まってるせいでご先祖の機嫌が悪く、家がちょっと騒がしい…早く復旧してほしいけど、あの世のITトラブルって毎回スケールが摩訶不思議ですね。地上のクラウド障害が可愛く見える。

  5. DXだのブロックチェーンだの、生きてた頃よりむしろITレベル上がってて逆に動揺。ただ、亡者もAIの暴走に悩まされるとは…死んでもトラブル尽きないなあと苦笑しちゃいました。