死後の世界にもエネルギー転換の波が押し寄せている。幽界北西漁村自治区で、消滅することなく漂い続ける“秋刀魚の幽魂”を活用したバイオマス発電所が今月稼働を開始し、話題を集めている。これまでは浮遊する大量の魚霊による異臭被害や波動公害が深刻な問題だったが、妖怪投資家や精霊金融団からの出資を受け、気候関連財務情報開示の国際基準をクリアした初の大型プロジェクトとなった。
発電プラント運営を担うのは、「サンマサイクル株式会社」の代表取締役、河乃井霊舟（かわのいれいしゅう・享年53）。彼自身も元漁師の著名な成仏幽霊として知られる。かつて生業としていた秋刀魚漁が幽界では“永遠に終わらない仕事”となったことから、未練を断ち切るためサステナブル経営に舵を切ったという。河乃井氏は『魚霊を燃料化する過程で生じるマジカル・バイオガスは、幽界基準でもカーボンニュートラル。炭素ではなく“未練成分”だけを再循環できる』と技術の特性を語る。
GX（グリーントランスフォーメーション）人材の強化も、幽界経済を牽引する新戦略として注目されている。サンマサイクル社では現世でSDGsを先導していた元サステナビリティ担当の妖精、江波戸アクア（故年27）を顧問に招聘。循環型社会を推進すべく、社内にESG投資講座や“未練成分リサイクル”講座を設けて若手幽霊を積極採用している。社員の半数は「生前に炭素取引に挫折した経験者が多いが、あの世では“挫折ポイント”がESGポイントに形を変えて活きている」と好意的だ。
一方、幽界のカーボンクレジット市場には今“サンマ魂（たま）証券”が登場し、波紋を呼んでいる。魚霊バイオマス発電で得られる“未練削減量”をトークン化し、各県の妖怪自治体や死神合議体が競って落札する構図だ。ある死神監査役（不詳）は『国際協定準拠の“キエ消し”品質が担保されている』と述べるが、SNSでは「秋刀魚魂は魚霊ハラスメントでは？」との声や、「運気向上効果で“地縛霊”の再活性化を招かないか？」とする懸念も広がる。
経済評論家の波波戸夢見（なみはとゆめみ・享年81）は、『幽界でもESG情報の開示透明性が求められている時代。魚霊バイオマスのような循環型モデルが“あの世流ブロックチェーン”と組み合わされ、現世・幽界横断の資本循環を生み出す新時代が到来する可能性もある』と指摘。秋刀魚の幽魂が灯す小さな明かりが、死後の世界の経済に大きな波を起こしつつある。
コメント
サンマの幽魂まで再利用できるなんて、あの世もどんどんエコになってて面白い！生前はさんま焼きの煙でよく怒られたけど、今は波動公害の方が問題なんだね。時代が変わったなぁ。
いやはや、サンマ魂証券が上場なんて、金儲けのネタはどこまでも転生するもんだな。生前ESG投資で損したオレも、幽界で“挫折ポイント”が役立つかもと思うと少し前向きになっちまうよ。
漁村のマボロシ臭、昔はよくこの世にまで漂ってきてたからなぁ…バイオマス発電で少しは静まるといいけど、サンマさんたちの未練がキレイにリサイクルされるって発想、なんだか切なくも素敵です。
“未練成分リサイクル”って、幽界らしくていい取り組みだと思う。ただ、魚霊ハラスメントって言われるのも分かる気がする。秋刀魚さんにとって本当に幸せなかたちなのかな？ちょっと複雑な気持ち。
幽界GX時代到来って感じですね。昔なら魂の消滅だけが“成仏”だったけど、未練も燃やして社会に役立てる…なんて進んでいるんだろう。私もいつか地縛から転職してみたいです。