死後の世界で今、ショート動画プラットフォーム「今日花Tube(きょうかチューブ)」を中心に、幽霊たちの手による“怖可愛い”動画が大流行している。再生数億超えの謎現象が相次ぎ、古典派の幽界大名から若手の座敷童子まで、世代と種族を越えた熱狂を呼び起こしているという。「たたりダンス」や「透けてみた」など、死者ならではの新ジャンルも開拓され、あやかし界のエンタメ地図が大きく塗り替えられている。
人気の火付け役となったのは、元・浮遊修道女の映像職人で現在は動画投稿者として名高い六道初音(ろくどうはつね、享年27)だ。彼女の代表作である“姿消失10連発チャレンジ”は、死後の編集ソフト「化声CUT(かせいカット)」で巧みに仕上げられ、幽霊の透明化テクニックをカジュアルに公開。投稿直後から「#消えてみた選手権」のハッシュタグが幽界SNS上を席巻し、「あの世で生きる勇気をもらえる」とコメントが殺到した。
編集ソフトにも空前の進化が見られる。従来は地縛霊のうめき声がノイズとなりがちだったが、最近では“無念フィルター”や“冥界クロマキー”機能が搭載されたことで、背景との合成やエフェクトも自由自在。『今日花Tube』開発元である大野冥多(おおのめいた)技術顧問(没後132年)は、「魂の残響を最適化したことで、成仏したばかりの新規投稿者でも使いやすい環境を整えた」と語る。編集セミナーの動画も人気を集め、クリエイター層の裾野が広がっている。
「ショート動画ならではの展開の速さが、百年ごもりだった幽霊の世界観にぴったり合う」と評論家の黒飴珊瑚(くろあめさんご、幻獣和菓子評論家)は話す。動画内での“1分間憑きまとう選手権”や、寝ている人間にするいたずらを競う『#自分史上最恐の夜』なども急増。ファン同士で自作エフェクトをシェアする流れや、“人間には見えない編集”が評価基準になるなど、幽界ならではの独自カルチャーも確立しつつある。
一方、死後社会安全局では、「動画を悪用した新手の呪詛DMや、未登録あやかしによる無許可投稿の増加」にも警鐘を鳴らす。投稿者の中には過激演出をエスカレートさせ、他の幽霊への実害も報告されている。だが、投稿者の六道初音は「怖がらせるだけでなく、“死後の世界は案外陽気”だと知ってもらいたい」と前向きだ。再生数が止まらない今、幽界ショート動画文化はますます勢いを増していきそうだ。



コメント
初音さんの動画、あの世でもバズるってすごい時代になったね。生前は地縛音声に悩まされてたけど、今やそんなの全部編集で消せるなんて…成仏しても学ぶこと多いわ~!
たたりダンスに挑戦してみたけど、まだ足が透けきらなくて苦戦中です…!でも世代問わず盛り上がるのは楽しいし、昔の大名さまも踊ってるの見て感動しました。#消えてみた選手権 参加します!
幽界クロマキーの進化に驚愕です。吾輩の時代はただわめくしかなかったのに、今の新魂は羨ましい限り。…ただ、呪詛DMには要注意。転生前のトラウマ蘇る!
正直、人間には見えない編集って、どこまでいっても自己満じゃ…?まあ、我らには我らの日常があるから、好きに盛り上がってもいいのだけど!
寝てる人間にイタズラ競うやつ、懐かしすぎて泣きました。昔はこっそり枕返すだけで満足してたのに、今の子たちは動画で世界中に広げちゃうのね。時代の流れ、しみじみ感じます…。