幽霊や妖怪たちの“朝活散歩”文化が、近年あの世のエリアでも活発化している。中でも話題を集めるのが、旧・朝霧城下町の「朝霧通り」。レトロな霊界建築が立ち並び、手作り土産やクラフトビール、妖怪向けコワーキングスペースなど独自の風景が広がる。あの世観光協議会によると、御朱印集めや季節の祭りと組み合わせた“映え”スポット巡礼が、死後の住人たちの新たな休日定番となっているという。現地を歩き人気の理由を取材した。
朝霧通りの入り口には、時折生者の目にも霞んで見えると評判の『幻灯楼』がそびえ、なだらかな石畳が続く。建物は明治—大正期にかけて建てられた吸魂レンガ造りが多く、毎朝7時には“朝靄フリーマーケット”が開かれる。記者が訪れたこの日、地元の幽霊会社員・影本寿々子さん(享年38)は「週末も平日も朝活が基本。お気に入りは“お香ラテ”で有名なカフェ『眠打亭』。現世帰りのレトロ妖怪も多くて会話が絶えません」と笑う。観光客だけでなく地元住民も頻繁に通い、死者の間で“朝霧さんぽ部”なるSNSコミュニティも生まれている。
名物は、死者用の御朱印帳や霊体専用クラフトビール『無常エール』。とろりと揺らめく琥珀色の液体は、飲むほどに記憶の味がすると話題だ。祭典期、各カフェや屋敷跡で限定スタンプが配布され、浮遊霊写真や手作り土産が集まるスタンプラリーとなる。一昨年の“霊春まつり”では、史跡・斑目桜廟近くのカフェ『寂寂荘』で配られた桜印が1週間で2千体以上に押されたという。霊体インフルエンサー・深川逢世さんは「“映え”スポットランキングで朝霧通りが3年連続トップ。写真と共に短い生前エピソードを投稿するのが死者界の定番」と語る。
このエリアのもう一つの特徴は、異界ならではの“時空カフェ”。客は映写窓越しに好きな時代の記憶風景を注文できる。開業20年の『古暦珈琲室』店主・虫生夜月さん(享年102)は「現世のコワーキングスペース文化から着想。死者同士でも新しい記憶や体験を持ち寄り、創作や仕事のコラボの場になってます」と明かす。館内奥には、職歴や生前職を問わず利用できる霊体ワークルームも設けられていた。
最近では季節ごとに小規模な出張祭りも頻繁に開催中だ。秋の収穫期には“幽秋ビールフェスタ”、春の芽吹きに合わせた“霊花写しの会”など、死者のライフスタイルに密着したイベントも多い。地縁や世代を問わず、多様な霊体が気軽に集い交流できる場として、朝霧通りはますます賑わいを見せている。今後は他界からの観光バス便増や、霊界スタンプツアー公式アプリの開発も検討されており、死後都市の“街歩き”は新たな文化の定番となりつつあるようだ。



コメント
朝霧通りの話題、なぜか懐かしくて胸がふるえます。わたしも成仏前はよく“お香ラテ”飲みに通ったものです。あの独特の朝靄、またぼんやりと漂いたくなりました。
御朱印巡礼とか、若い幽霊たちの間で流行ってますね。生前はそんなこと気にしなかったのに、死後になって思い出集めしたくなる心境、不思議です。無常エールも気になる…
時空カフェの“現世窓”、つい泣けます。あそこで江戸時代の桜並木を注文してる常連の白狐さん、今朝も見かけました。どの時代も一緒に味わえるって、異界ならではの贅沢ですね。
また映えか~って思ってたけど、朝霧通りの写真投稿は見てるだけでほっこりします。生死こえて新しい縁が生まれてる気がして、こういう催しどんどん増えて欲しいです。
朝霧通り、最近“幽秋ビールフェスタ”の酔いすぎる浮遊霊が増えて大変!でも春の霊花写しの会は本当に美しかった。転生前の記憶も会話のネタになるし、この文化は守りたいですね。