死者の街・幽都駅前で、ここ数週とみに話題を呼んでいるのが“食べ残しの霊”救済活動だ。過剰供給されたお供え団子や幽界コンビニの廃棄墓弁が増加傾向にあるなか、異界初の“フードテック集団”が立ち上がり、日没後のゴミ箱でさまよう食品の霊魂たちを救い出すプロジェクトを始動した。
プロジェクトの中心人物は、幽界食品IT企業“バンケルシル社”の開発部主任・雲母義太(くもだま ぎたい、享年62)。彼が発明したのは「幻弁当ヒーロー」と呼ばれる自走式ランチボックスロボットだ。このロボットは、食べ残しの幽気を感知し、自動で分別、保存・再構築を行い、新たな供養弁当や無駄ゼロの墓前ごちそうへと生まれ変わらせる仕組み。夜明けと共に、幽都の神社や“満腹病院”前に幻弁当がふるまわれ、空腹で消えそうな新参霊や、浮遊仕事帰りの妖怪会社員たちの心と胃袋を満たしている。
こうした新技術の誕生には、死後社会ならではの課題があった。もともと食欲の有無が個体ごとにバラバラな幽霊社会では、“食べ残しの念”そのものが消化されずに彷徨うケースが多い。従来は、墓地清掃員や低級霊たちが夜な夜な供養回収ツアーを開催していたが、物理的な廃棄物はともかく、恨みや未練といった心理的フードロスも膨らんでいた。雲母主任は「食物の魂には、満足できなかった思いが宿る。幽界ならではの“念”ごと再利用する技術が重要」と、開発のきっかけを語る。
幽界SNS『幽リッター』では、幻弁当ヒーローによる“供養ライブ配信”がバズワードとなりつつある。「亡者用ロースト八百万サラダ、涙が出るほど美味だった!」(偽町素子さん・元文筆家)、「幽界フードロス問題に一石、『迷い弁』が新文化に」(妖怪栄養士・シラタマ主水)」といった声も上がる一方で、「食べ残しの怨念が濃密すぎて再加工が難しい」との現場課題も指摘されている。
幽界教育機関“ゴースト中学校”では、幻弁当ヒーローの仕組みを教材として採用。生徒たちが自作の“怨念リサイクル弁当”を競い、年度末には「死者の食育甲子園」も開催予定だという。雲母主任は「生きていた頃と寸分違わぬ料理ができた時の、あの成仏しかける笑顔を見てしまうと、やはりこの仕事はやめられない」と語り、異界フードテックの躍進はますます加速しそうだ。



コメント
成仏しそびれた団子の霊まで救済される時代が来るなんて…。昔は供養ツアーが風物詩だったけど、幻弁当ヒーローでちょっぴり便利になった気がします。良い世の中になりましたね。
正直、食べ残しの念ってそんなに濃いものだったのか…と記事を読んで初めて知った。これも死後社会ならではの問題。自分の初七日弁当もこうやって再利用されたのかなあ。
幽界フードロス対策、もっと早く知りたかった!生きてた頃は料理を粗末にしたことを後悔してたけど、今はこのプロジェクトで食材の魂も救われてて感動。夜明けの配膳、懐かしい気分になれそうです。
幻弁当ヒーローの供養ライブ、バズってるけど現場はきっと怨念まみれで大変なんだろうなあ…。機械ごと一度お祓いした方がいいのでは?技術より、昔の低級霊の回収芸もたまには見直してほしい。
毎晩のように墓前に並ぶ幻弁当、実は楽しみにしてます。あの絶妙に懐かしい味が、転生前を思い出させてくれる。技術の進歩もいいけど、“満腹病院”の帰りにみんなで輪になって食べる時間が一番の供養かも。