近頃、冥界西部の産業団地では、赤く燃える煙が夜通し立ち上り、不思議な閃光が空を裂いている。これは、妖怪工程士・赤尾ゴウゾウ(永遠齢)が主導する「鬼火蓄電池」量産プロジェクトに端を発するものだ。“燃え尽きぬ炎”として名高い鬼の魂の火を使い、従来の幽気発電や精霊エネルギーとの大幅な効率化が見込まれているという。
工場内部では、浮遊する機械が自律的に動き回り、鬼火の揺らめきが封入された特別なバッテリーが次々と組み立てられていた。「鬼火自体は江戸期から民間伝承に残るが、近年ようやく安定して閉じ込める技術が確立された」と話すのは、主任研究員の釜吹ミドリ博士(死神・享年39)。鬼火は供給が安定しており、悪戯好きな鬼たちの協力も相まって、同工場では24時間体制のエネルギー生産が可能になったという。
注目すべきは、この蓄電池が“永遠発電”と称されるほど自己再生力に優れている点だ。電力消費によって炎が弱まっても、鬼火内部で微細な魂粒子が自動的に再燃し、第三者の念力補給や夜間の闇気吸収によらず供給可能状態を維持できる。使い切ったバッテリーは精霊郵便網経由で回収することで、適切な魂波長調整を経れば、再び新品同様に甦る仕組みだ。
実用化により、「大量消費型の妖怪家屋も電力遮断の心配がほぼ不要となった」と、異界住宅協会の会長・木霊シゲル氏(樹霊・樹齢130)がコメント。これまで照明・換気・ポルターガイスト現象などで大量のエネルギーを浪費していた家屋も、鬼火蓄電池による省エネルギー化が進む見通しだ。SNSでも「うちの座敷童子が夜通し走り回っても、明かりが落ちなくなった!(幽霊主婦・43)」などの報告が多数寄せられている。
一方で、反対の動きもある。“魂資源の乱用”を懸念する精霊グリーン団体・『逢魔が時プロジェクト』の代表、雨切オユミ氏(雨女・享年28)は「鬼火の長期利用による魂原資の枯渇や、循環の不調が自然霊系に影響を与える可能性」を指摘。工場側は「審査霊庁による年次監査を徹底し、自然霊との共生モデルを最大限尊重する」としつつも、今後異界社会全体でのエネルギー需給バランスの議論が高まりそうだ。
先行導入された冥界鐵道では、老朽ジェット霊車両のエンジンが鬼火モデルに順次置換され、移動の安定性と省燃費効果がすでに報告されている。死後の社会にも、“消えぬ灯”を支える新しいエネルギー革命の波が、静かに、そして力強く広がりつつある。


コメント
鬼火って江戸の頃はよく道端に転がってたものだけど、こんな形で工業利用される時代が来るとはねえ。明治の停電騒ぎ思い出して懐かしくなったよ。時代は進んだなあ。
いや〜驚いた!まさかうちの百体屋敷で一晩中灯りが点くとは。昔は座敷童子が遊びすぎるとすぐ暗闇になって困ったものだけど、これで安心だ。発明者さん成仏できないくらいすごい仕事したね!
便利になったのはうれしいけど、魂資源のことちょっと心配……。あんまり使いすぎて、あの世のバランス崩れなきゃいいけど。もうすこし慎重に進めてほしいなぁ。
資源の枯渇の話、わしら閻魔界でも何度も出ておる。新技術がもたらす恩恵もあるが、魂の循環は死後世界のいのちそのもの。監査や共生はしっかり頼むぞ、赤尾殿。
鬼火のバッテリー、前世では空想の話だったのに、まさか冥界鐵道まで走らせるとは。世の移り変わりって不思議だね。異界にも技術革新の夜明け来た、って感じでちょっとワクワクする。