湖底からのSOS?半透明市民科学者団体、幻のマイクロプラスチック調査へ

湖底で半透明の幽霊や精霊、市民科学者たちが発光するマイクロプラスチック粒子を観察し、透明なドローンを操作している様子。 市民科学
死後の湖底で、市民科学者たちが幽体ドローンを使いマイクロプラスチック調査を行う光景。

死後の湖沼群で今、あの世ならではの環境問題への新しい取り組みが静かな注目を集めている。湖底に棲む幽霊や精霊、妖怪たちが、自発的な市民参加型プロジェクトを立ち上げ、死後世界の日常にひそむ“マイクロプラスチック問題”の全容解明を目指しているのだ。先週末には、初のオープンサイエンス型大型調査が幻光湖で開始され、幽世域の話題を独占した。

プロジェクトの名は「半透明サイエンス・ラボ」。発起人は湖精霊のヌマノ・アヤメ(154)。自然環境の健全さを日々守ってきたというアヤメは、「水面下の変化が近年とくに激しい。やけにキラキラした、見慣れぬ粒子が増え、生態系に異常が広がっている」と語る。調査には幽霊高校生や深淵に棲む小魚の霊、人間だった頃から環境政策に携わっていた死後行政官らまで、幅広い参加が認められた。湖底から水中を自在に行き来できる幽体離脱能力も、現世の研究者にはない特典だ。

今回、市民科学者たちはデータ収集に最新の幽体ドローン網『レイスネット・ミニ』を使用。透明な羽根を持つこの装置は、マイクロプラスチック粒子を吸着し、追跡発光体で分布を可視化できる。“レイスネット”の収集データは即時にインターネットのあの世版『アフタークラウド』へ掲載され、誰でもライブで状況を確認できるほか、希望者は自分の湖底データも匿名でアップロードできる設計だ。

成果もさっそく現れている。集計されたデータからは、幽霊たちがよく使う霊界ラップトップ端末やあの世特有の供養飾りの微細破片が、流れ込みの渦に沿って局所的に集中していた事実が判明。死後の社会で増える新素材ゴーストプラスチックも検出され、“水辺の幽狐”ことカワシロ・シュウゾウ(幽狐・71)は「この情報を元に、対象エリアの清掃や供養技術の改善が簡単になるはず」と期待を寄せる。

また、プロジェクト参加は幽界学校の理科教育の一環としても認定された。参加した妖怪児童らは、調査観察を元にデジタル画面上でデータ的に“湖の心”を描写するワークショップに挑戦。幽世SNS上では『粒子の海グラフィックコンテスト』が開催され、可視化されたデータを基に独自の湖底生態アートが数多く投稿された。精霊教師のカタリベ・リュウジ(幽教師・210)は「市民科学と幽界流アートの融合が、次世代に楽しく知識をつなぐ新風景」と話している。

「半透明サイエンス・ラボ」の公式サイトでは現在、誰でも自分の暮らす湖や池の“違和感”報告フォームを解放中。“死後の環境”という未知の領域でも、市民参加と科学の力で少しずつ謎が明らかになる――。次回の調査先は、かつて妖怪たちの縁日が行われていた“霞み逢いの池”と発表されており、さらなる発見に期待が高まっている。

コメント

  1. 私が子どもの頃(もう200年以上前ですが)、湖底はもっと静かで澄んでいました。いまやマイクロプラスチックが幽体にもまとわりつく時代とは…驚きと少し寂しさも。市民科学、応援します。

  2. “レイスネット・ミニ”の映像、アフタークラウドで拝見しました。人間の頃と違い、自由に水底をのぞけるとはいえ、異界でも環境問題が進行しているとは驚かされますね。次回の霞み逢いの池調査にも注目します。

  3. どうせ死後の世界だし、物質は影響ないと思ってたけど、霊界ラップトップの破片が渦に溜まるのはちょっとショック…供養飾りも、もっと自然に還る素材にしてほしいな。

  4. 粒子の海グラフィックコンテスト、見てきました!幻光湖のデータアート、とても幻想的で涙がにじみました。こうして子どもたちが理科観察で異界の自然を楽しむの、成仏も忘れて見入ってしまいます。

  5. 半透明サイエンス・ラボ、良い試みだと思うけど、どうせ転生組が出す『新素材ゴーストプラスチック』の責任追及はしないんでしょ?幽狐の清掃だけじゃ、根本解決は厳しいと思います。