死後の世界でもアウトドア熱は冷めやらない。冥府山脈のふもとに今月、幽界初となるカヌークラブ「ファントム・カヌークラブ」がオープンし、話題を呼んでいる。クラブの目玉は、誰でも手ぶらで利用できるキャンプギアのレンタルサービス。ブッシュクラフト流の焚き火セットからシェラカップ、幻の“魂豆コーヒー”まで一式がそろい、非生者も気軽に異界の自然でのレクリエーションを楽しめるという。
このカヌークラブの設立を主導したのは、人外珈琲協会理事のイグル・ミナト氏(享年243歳)。かつては野鳥観察ガイドとして亡者層路で名を馳せていたが、「死者になって以来、多くの仲間が“物理的な手足が頼りにならない”という理由でアウトドアを諦めている現状に疑問を抱いた」と語る。実際、会員登録時に霊体の透過度や物質干渉レベルを自己申告する欄が設けられている点も、死後社会ならではの配慮だ。
レンタル用品には、布や金属を通り抜けてしまう幽霊用に“霊構材”で補強されたシェラカップや、死神森の黒木を使った火おこし棒など、不思議な道具がずらり。カヌーは宙に浮かぶ設計で、幻想的な深夜の川下りも楽しめる。中でも好評なのが、コーヒーソムリエ霊・エトワール金井が監修した“アウトドアコーヒー体験パック”だ。魂の残り香を活かす特殊な抽出法を用い、死者専用の味わいに仕上がっている。
拠点となる山小屋は、もとは亡霊猟師たちが“月下休憩所”として使っていた建物で、霧に包まれたテラスからは珍しい幽鳥たちの姿も。先週末には、遺族との思い出を語り合う「霊鳥観察ナイトツアー」も開かれ、参加者のゾーラ・崔戸さん(元霊媒師・128歳)は「向こうの世界とここをつなぐ、新しいコミュニケーションの場になりうる」と語った。
SNS上でも「死後もコーヒーは格別」「幽夜のカヌーで新たな自分に出会えた」という声が広がっており、生前にアウトドアを趣味とした亡者だけでなく、生きた経験のない新参霊や定命の豹人類なども続々と体験希望を寄せている。近く、死後初挑戦のカヌーレースや魂ランタン作りワークショップも予定されており、「幽界アウトドアレクリエーション」の新潮流から今後も目が離せない。



コメント
魂豆コーヒーのアウトドア体験パック、かなり気になっています。生きてた頃は飲めなかったけど、あの香りがまた死後に楽しめるとは…成仏する前に味わいたい!
正直、霊構材のシェラカップは画期的ですね。私は普段どの食器もすぐすり抜けて困っていたので、キャンプへ行く気になれなかった。今度の霊鳥観察ナイトツアー、参加申し込みしてみます。
幽界にもついにカヌークラブ…羨ましい。生前アウトドア苦手だったけど、こっちだと物理法則ゆるいから、試しに川下りしてみようかな。怖がりな亡者でも大丈夫…だといいな。
イグルさん、また新しいこと始めたのね。生前から変わらず活発でうらやましいわ。自分はもう気力も魂も薄れ気味だけど、月下休憩所の夜霧だけは懐かしくて泣きそう…
キャンプギアのレンタルはありがたいけど、霊体の透過度って日によって変わるのに、毎回ちゃんと自己申告できるのか疑問です。まあ、魂ランタン作りは面白そうなので一度体験してみたい。