死後界北部の月下原区、今年も“ざれ言ノ木”が青葉を広げる季節がやってきた。話すように音を立てるという不思議な木を使った、新感覚ガーデンコンサートが幽界園芸愛好家サークル「アルカナ緑友会」の主催で開催され、園芸と音楽の融合という異界の趣味事情が静かに注目を集めている。
コンサートが執り行われたのは、サークル代表の霊鳥志摩(れいちょう・しま、270)が丹精した庭園「薄影の中庭」。この庭の一角で、体長2メートルを超える古株の“ざれ言ノ木”がライトアップされ、枝や葉を丁寧に選定した手作りの楽器が奏者の手に渡された。「ざれ言ノ木」は死後300年を経て言葉のような音を奏でるとされ、幽界では万能楽器材として人気を集めている。
この夜の目玉となったのは、演奏家の狼谷朱紫(ろうや・あかし、見習い死神・102)が自作した『語り弦(かたりげん)』。通常のリュートにざれ言ノ木の枝を組み合わせ、弦をはじくたびに霧が溶けるようなささやき声が庭中に響きわたる。聴衆からは「過去の記憶に話しかけられているよう」「魂に効く静かな語りかけ」とSNSで感動の声が次々に投稿された。
DIY好きの幽怪たちも会場に多数集結。樹皮からは“囁きフルート”が、空洞部分からは小型の打楽器“トコトコ鼓(つづみ)”が生み出された。園芸ファンの霧島桜子(きりしま・さくらこ、妖怪園芸家・144)は「素材集めから楽器仕上げまで無念さ加減で音色が微妙に変わる。DIYイベントとしては最高のスリル」と満面の笑み。ガーデニングとモノづくりの組み合わせが、新しい死後の趣味文化をつくりつつあることがうかがえる。
コンサート後半は、観客参加型の“ざれ飲み”タイムに。オンライン霊気配信を利用し、離れた世界の友人たちも皆、庭の噂のドリンク『薄影ティー』片手に“ざれ言ノ木”の樹の下で語り合った。幽界観光局の村国久遠(むらくに・くおん、精霊ガイド・211)は「旅行気分は庭一つで味わえる。死後の新時代は“家の庭で世界とつながる”がキーワード」と話す。硬い土を柔らかく耕し、音楽と言葉を宿す“ざれ言ノ木”が、異界のコミュニティと新しい趣味交流の象徴となりつつあるようだ。


コメント
ざれ言ノ木の楽器、昔うちの庭にもありましたが、夜ごと家族の記憶をささやかれて眠れなかった思い出が蘇りました。幽界もどんどん新しい趣味が増えてうれしいですね。
語り弦の演奏、配信組で聴いたけど本当に魂がなごみました。霊界DIYも熱い!うちのは変な音しか出なかったので来年は現地参加目指します。
ざれ飲みタイム!?くぅ~楽しそう!成仏して以来お酒は飲めなくなったけど、薄影ティーには何かしら未練の味がありそうで気になる。
新時代とか言いながら、結局庭で集まってざれ言ノ木に託けておしゃべり…あの世もこの世も変わらないなあと妙に懐かしくなりました。
ざれ言ノ木の青葉ライトアップ、実は夜目だと色が七変化するんですよね。幽界園芸イベント、今度は視覚系の企画もぜひお願いしたいです!