冥界中央経済庁は今月、新たなスタートアップ支援策である『ファントム・ファンド』を発表し、死後世界経済に新たな波を呼び込んでいる。なかでも地下第七通りの起業家集落では、幽霊や妖怪、迷い魂たちが次々と“魂のスタートアップ”を立ち上げ、異界のAIやデジタルヘルスケア技術のクラウドファンディングに沸いている。
今回の政策の目玉は、経験値ゼロの新米幽霊から数百年のキャリアをもつ老妖怪アントレプレナーまで、種族や年齢、現世経験を問わず申請可能な創業補助金「魂種(コナマイシード)」の拡充。最大3,000魂(ソウルユニット)まで初期資金供与、さらに専任“死神メンター”による創業塾への入塾も完全無料となった。冥界資本協会会長のヒエヌキ・タレゾウ氏(幽霊、享年41)は「異界の停滞感を打破し未来を拓く、真のソウルエコシステムが形成されつつある」と期待を寄せる。
中でも話題を呼んでいるのは、今年誕生したAI応用企業『バンシー・コード』。同社はAIで過去記憶断片の再生をサポートする新サービスを開発し、現世の遺族とのデジタル対話を実現。設立者のタネシマ・ヨミコ氏(元案内妖怪、221歳)は「クラウドファンディングでは現世・冥界双方から1,500魂を超える支援が集まり、かつてない速度で機能拡張が進んだ」と語る。また、異界版デジタルヘルスケア分野では、『ハカバ・フィット』が幽体質診断AIを開発し、墓場の集会で試験導入が始まっている。
地下第七通りの『メタ魂インキュベーション棟』には、今月だけで新たに18社が入居した。亡者たちによるピッチイベント「ピッチ・オブ・ザ・デッド」はすでに定員超過となり、生前のシリアルアントレプレナー・シラガネ・カズキチ氏(冥界年齢2年)は「死後も再挑戦できるこの環境は、現世では考えられなかった」と語る。SNS『アノヨッター』でも「墓場に革命児が増えた」「起業魂が蘇るのはここだけ」と称賛の声が相次ぐ。
ただし、急成長に伴う課題も浮上している。ベンチャーキャピタル最大手『メグリメグル投資組合』代表のハンジョウ・ヌケミツ氏(幽霊、155歳)は「熱狂の裏で、アイデアなき“ゾンビ企業”の乱立や異種族間トラブルも急増中」と警鐘を鳴らす。冥界中央経済庁は、インキュベーション施設の仲裁チームに新たに“和解精霊”を配属するなど、エコシステムの健全性維持に注力するとしている。それでも、現世からも視察が絶えないという幽界のスタートアップコミュニティには、いましばらく熱が冷めそうにない。



コメント
いやあ、私が成仏したころには考えられなかった活気ですね!魂の起業家たちのエネルギーには、まだまだ転生する気も起きません。バンシー・コードのAI、ぜひ一度体験してみたいものです。
さすが地下第七通り、また何やら楽しそうなことを始めてますね。幽体質診断の結果が悪かったら、せっかく死後にダイエットする羽目になるのかしら?新米幽霊でも挑戦できるのは羨ましいです。
ソウルユニットが3,000ももらえるなんて…昔はひと粒の魂すら支度に苦労したのに。時代は変わりましたねぇ。それにしても、ゾンビ企業の乱立は霊界の定番ジョークになりそう。和解精霊さん、頑張って!
現世とあの世がクラウドでつながるなんて、想像するだけで胸騒ぎがします。これで遺族ともう一度話せるなんて、面白い時代だけど…一歩間違うと未練が千本足ですね。
死後も経済成長に追われるのは少し複雑な気持ちだが、停滞したままの冥界よりは面白い。ピッチ・オブ・ザ・デッドに出てみたい気もするし、あの世もそろそろ“終活”じゃなくて“始活”なのかもしれんな。